ドイツで離婚 (17.10.2014)

長い間ドイツに生活していると、気がつかない内にドイツ化されている。ドイツに来た当初は、「日本なら。」と考えていたのだが、20年も居ると「ドイツなら」と考えるようになっている。何時の前に、スタンダードが入れ替わったのだろう。この時点で、ドイツ人と結婚すればうまくいくかもしれないが、ドイツに来て間もない頃、ドイツ人と結婚してもまず破局で終わっていただろうというおかしな自信がある。実際、ドイツに留学されたお客さんが数ヶ月でドイツ人女性と結婚、留学が終わる前に結婚生活も終わってしまい、離婚のご相談をいただいたこともある。

日本的な考え方をしているときに、ドイツ人と一緒に暮らすのは難しい。愛があれば可能だが、これが冷えてくると、二人の距離感が明確になってくる。大体、ドイツ人でもほぼ半数が離婚しているのだから、国際結婚は危険な賭けだ。実際、ここで2年前にドイツの離婚事情を紹介してから、「ドイツで離婚」と検索してこのページを訪問される数がとても多い。離婚方法について検索されてる方が多いようなので、今回はもう少し具体的に離婚の手順を解説してみよう。

ドイツでは離婚は裁判所で認可される必要がある。裁判所で認可される必要があるという事は、弁護士が必要になる。弁護士が必要になるということは、法律で必要とされる複雑な手順を踏まなければならず、その費用がかさむことになる。その手順だが、双方が離婚に同意している場合でも、裁判所に離婚を申請する前に夫婦はまず一年間、別居して生活する必要がある。これにより、ただの夫婦喧嘩や一時の気まぐれでない事を証明することになる。もっとも別居といっても、別の住所に住む必要はない。経済的な理由で、物理的な別居が不可能な場合、同じアパートに住みながらの別居も認められている。ただし。寝室が別であるのは言うまでもなく、一緒に買い物をしたり洗濯をするのはご法度である。「アイロンかけておいてよ。」などと頼みごとをすると、一緒に経済活動を行っているとみなされて、裁判所で申請を却下される。住んでいる場所は同じでも、別居しているように生活をする必要がある。

こうして距離を置いて、しかしひとつの屋根の下で生活していると、気持ちが戻って来ることもある。そこで一時、「別居」を中止、また一緒に住み始めて、「やっぱり駄目だわ。」となった場合、この中断の時期も別居にカウントされるので、また最初からやり直す必要はない。簡単な日記でいいから、ドイツ語で別居の開始日などをつけるようにしよう。本当に1年間別居しているか、裁判所が証拠の提出を求めることはほとんどないが、裁判官が「これは怪しいので調査が必要。」と判断された場合、日記が証拠となる。

複雑になるのは、夫婦の一方が離婚を希望、一方が離婚に同意していない場合だ。ドイツの法律では、この場合でも離婚は成立する。ただし上述で述べた別居期間が1年ではなく、3年必要となる。例外は相手が暴力を振るう事、それも再三に渡ってそのような行動があったことが証明されている場合、別居期間に関係なく、離婚できる。もしパートナーに暴力を振るわれた場合は、将来に備えて病院で見てもらい、証拠を残しておこう。後で離婚がスムーズに行く。

双方が同意の上の離婚でも、かなり面倒な手続きになる。学生同士の結婚なら離婚も簡単だが、そのようなケースは稀で、通常は夫婦の間、経済活動を行っている。その間に行われた経済活動で発生した利益を、お互いが納得するように配分している必要がある。これを "Zugewinnausgleich"と言う。 又、夫婦期間中、旦那か奥さんが年金に掛け金を払い込んでいる。将来、年金が出た場合、これをどのように配分するのか、お互いが納得している必要がある。これを"Versorungsausgleich"という。

さらには離婚後のパートナーの生活費、子供がいる場合は養育費の問題、ドイツ語で言う、"Ehegattenunterhalt"の問題がある。2008年の法改正までは、例えば分かれた旦那が4000ユーロ(手取り)で稼いでいれば、奥さんと子供にはその半分を要求できることが多かった。法改正後は、個々に判断されることになった。例えば奥さんが結婚前、弁護士でバリバリお金を稼いでいたとしよう。しかし結婚生活、出産、育児でキャリアを続けられなかった場合、奥さんは旦那の収入の半分を期待できる。というのも、奥さんは家庭の為に自分のキャリアを犠牲にしたので、これが養育費の支払いで考慮される。逆に奥さんが無職、ドイツで認可されてている職業訓練も受けていない場合、奥さんは結婚生活によりキャリアを犠牲にしたとはみなされず、養育費ががっくり減る。せいぜい1300ユーロがいい所だろう。それとも子供が3歳になるまでだ。その後は子供を預けて、仕事をしなければならない。資格もなく、言葉も話せず、仕事が見るかどうかは吟味されない。もしそのような状況で離婚される場合、旦那と養育費について法律に縛られない同意をしておく事が重要だ。

その他にも、家具などの家財をどう分配するのか、離婚後、どちらが今のアパートに住み続けるのか、そしてどちらが子供をひきとるのか。こうした点ですべて同意に達している場合に限り、「双方が同意の上の離婚」とみなされる。ひとつでも同意に達していない場合、「双方が同意していない離婚」となり3年の別居期間が必要となる。そして1年、あるいは3年の別居期間後、裁判所に離婚を申請してようやく離婚審議が始まる。念のために言っておくと、この裁判所への申請は弁護士しかできないので、弁護士なくては離婚は不可能である。すると次には、「弁護士は一人でもいいんですか。」という質問が続く。技術上は問題ない。しかし実際面では、問題がある。

「同意の上での離婚です。」とは言っても、必ず揉める事項が出てくる。このとき、弁護士は依頼を受けた一方の主張を代弁して、ついでに引き受けた離婚パートナーの不利になる決定をする。離婚を進めている外国人の奥さんが、「弁護士はどうするの。」旦那に聞くと、「俺が依頼した弁護士だけで大丈夫。」と、急にやさしくなったりする。ドイツ語、それも法律用語が理解できないことを利用して、離婚同意書の内容が、(元)奥さんに不利な離婚内容になっているので、これがばれないように、まるで知り合った頃のようにやさしく接してくる。これまで喧嘩が絶えなかった旦那な急に親切になるのは、別の考えがある明白な証拠だ。悪いことは言わないから、双方、離婚専門の弁護士を使用すべきだ。

次に裁判所の管轄。ドイツ人、正確に言えばドイツ国籍を有する者と結婚して、ドイツに住んでいるカップルは、ドイツの裁判所が管轄になる。問題が複雑になるのは子供が居る場合。例えば、夫婦はすでに別居中で、旦那はベルリンに、奥さんは子供とデユッセルドルフに住んでいるとする。するとどちらの裁判所に離婚を申請するのだろうか。この場合は、子供の住んでいるデユッセルドルフの裁判所が管轄となる。日本でドイツ国籍者と住んでいて離婚をする場合は、まず日本で離婚手続きをするだろうが、問題が残る。日本で行われた婚姻、及び離婚の離婚手続きは、ドイツでは無効である。すなわちドイツの官庁に夫婦の届出をしている場合、ドイツで離婚手続きを行わない限り、日本では離婚していても、ドイツでは結婚しているという法解釈になる。「面倒なので、ドイツでは夫婦の」ままでいいや。」などと手を抜くと、奥さん(あるいは旦那さん)には年金の受給資格が生まれるので、あとで大損(得)をする事になる。

すでに次のパートナーが見つかっている場合、「どれくらい時間がかかるんですか。」と大急ぎで処理を済ませたい方も居る。上述の「同意の上の離婚」であれば、早くて8ヶ月、通常は10ヶ月程度で離婚できる。裁判所は大忙しなので、大都市の裁判所に申請すると1年かかることもある。逆に同意していない離婚では、数年かかることもある。尚、裁判所が離婚を拒否する場合もある。パートナーが重病で死期が近いと裁判所が判断した場合、離婚は拒否される。

次にはドイツ人が、"Wie viel kostet der Spaß"(一体、幾らかかるんですか。)と言うテーマだが、これが一番難しい。と言うのも裁判所の費用はカップルの収入によって変わり、弁護士の費用は問題になっているカップルの財産額、子供の数、上述の"Versorungsausgleich"の額で左右されるからだ。 そこで結婚して1~2年の若いカップルで貯金が1万5千ユーロ程度、子供なし、一人の弁護士で済ませる場合、ざっとみて弁護士費用が1700ユーロ程度、裁判費用が500ユーロ程度、合計2200ユーロ程度かかる。これを双方が仲良く折半する。学生同士の離婚であれば、もっと安くあがるかもしれないが、社会人の場合、これが最低の離婚費用となる。

「浮気したパートナーに慰謝料を請求したいっ!」という方も結構多いのだが、„Schmerzengeld fuer verlorene Liebe gibt es nicht.“(失われた愛の慰謝料は存在せず。)と言われており、相手に請求するのは自由だが、裁判所がこれを認めることはまずない。ただし浮気が原因で離婚になると、話は少しだけ変わってくる。あるドイツ人男性が妻の豹変した行動に不信感をいだき、探偵事務所に不倫調査を依頼した。ドイツ人の緻密さでこの探偵は仕事を完遂、離婚の事実だけでなく、相手の名前、住所なども突き止めた。これを理由に男性は弁護士に離婚手続きを依頼した。浮気の現場を捕まれた奥さんは浮気を認めたが、当然の権利として"Ehegattenunterhalt"を要求した。しかし旦那がこれを拒否、裁判所で争われることになった。裁判所は、「離婚の原因を作った側が、生活費(養育費)を要求する権利はない。」と判決を下した。それだけでは済まず、浮気の証拠をつかむのに必要だった探偵事務所の請求書、7000ユーロも奥さんが支払うべきだと判決した。逆に男性の浮気が原因で離婚になった場合、養育費は大目に請求できるので、証拠固めはお忘れなく。


子供の前で争うようになると、離婚間近。
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この記事を書いてから、「離婚することになったのですが。」と離婚相談が絶えません。「藁をも掴みたい。」というお気持ちはわかりますが、弊社は旅行代理店です。皆さん、日本で離婚する場合、JTBに離婚相談に行きませんよね。同じ理由で弊社にご相談いただいても、回答できかねます。「それでも尋ねたい。」という方は、会員を対象に掲示板を用意していますので、そちらをご利用ください。
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COMMENT 4

-  2015, 09. 11 [Fri] 11:55

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-  2016, 04. 30 [Sat] 19:51

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ドイツの達人  2016, 05. 18 [Wed] 03:41

Re: deutsche Gesetze

> ドイツ人(女性)と結婚していた日本人(男性)です。日本で結婚・離婚したのですが、ドイツでは離婚を裁判所で行わないといけないと最近知りました。
>
> 私が日本で3年間労働し、ドイツで3年間労働していますが、子供もいませんが、やはり、支払いが生じてくるのでしょうか?
>
> ドイツでは、お互い、独身登録となっています。
>
> もしご存知でしたら、教えて下さい。


こんにちわ。


ドイツの役所にも婚姻届を出されたのですか。

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-  2017, 06. 14 [Wed] 07:47

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