"Recht haben und Recht bekommen" (14.08.2014)

まずはドイツ語の説明から。"Kraftfahrzeug"という単語、何の事だがわかるだろうか。"Kraft"という単語に"Werk"(工場)をつければ、"Kraftwerk"(発電所)という意味になる。そう、"Kraft"とは力、正確に言えば、エネルギーを指す。"Fahrzeug"は乗り物だから、"Kraftfahrzeug"はエンジン、あるいはモーターが付いた車両を指す。長い言葉なので、通称、KFZ、あるいはKfzと表記する。すなわちトラックや農耕用トラクター、自家用車でもKfzである。ちなみにドイツ語で自家用車は、"Personenkraftwagen"、通称、PKW(あるいはPkw)と言うので、Kfzと誤解しないようにしよう。

「車を買おう!」と思ったら、ドイツではまず強制保険、"Kfz-Haftpflichtversicherung"に入る必要がある。この保険に加入しないとナンバープレートがもらえない。この保険は対人及び対物の損害をカバーしており、"KFZ-Halter"(車両の保有者)の好みで、車両保険(VollKasko)や盗難保険(Teilkasko)に追加して加入するシステムだ。口の悪い人は、「性悪説」に基づくシステムだというだろうが、このシステムの利点は明らかだ。日本では対人保険にさえ加入すれば、KFZの運転ができてしまう。お陰で事故を起しても相手の車の修理代を払えないケースがかなりある。日本のようなナイーブなシステムは改善されてしかるべきだが、「それでは車が売れなくなる。」と産業からの陳情で、システムの欠陥が明白なのに改善される様子はない。

それではドイツでは"Kfz-Haftpflichtversicherung"に入っていれば十分なのかと言えば、そうでもない。自分の過失で事故を起してしまった際は、重度の過失や、飲酒、薬物の影響下での運転、あるいは交通法規に違反した車両でなければ、保険が事故による被害額を支払ってくれる。(すなわち重度の過失や、飲酒、薬物の影響下での運転、あるいは交通法規に違反した車両で事故を起しても、保険は支払いを拒否する。)問題は、自分が被害者の場合だ。事故が起きると往々にして事故原因について、「相手が悪い。」という言い合いになる。後ろから衝突してきても、「前の車がバックしてきた。」と平気で証言をする輩がいるので、事故を見ていたドライバーや歩行者に名前を電話番号を聞き、目撃者になってもらうように頼んでおけばいいが、通常、そんな余裕はない。そのような場合、自損事故ではないので、自分の保険は動いてくれない。相手の保険は、「あなたがバックしてきたと言っている。」と保険の支払いを拒否する。日本ではそのような場合は、自分の保険が面倒を見てくれる特約条項があるらしいが、ドイツの保険にはない。運が悪いと車をぶつけられたのに、誰も責任を取らず、「ほったらかし」の状態になる事がある。そんなときに効果を発揮するのが弁護士保険である。

ドイツでは、"Recht haben und Recht bekommen sind zwei verschiedene Dinge"(正しいからと言って、それを認めてもらえるとは限らない。)と言う。そんな時に役に立つ "Rechtsschutzversicherung"と呼ばれる弁護士保険は、日常の生活上のトラブル、仕事上のトラブル、賃貸関係のトラブル、そして交通関係のトラブルの4つの分野に分かれており、希望する分野の保険に加入する。車を買ったら、交通関係の弁護士保険(年間の保険料は80ユーロ程度)に加入しておこう。これに加入していれば、事故の相手を訴えることができる。弁護士保険が必要なのは何も、事故のときだけとは限らない。

ドイツの地方自治体の家計は火の車である。見栄をはってコンサートホール、公民館などを新築してしまったが故だ。数年後にはコンサートホールは言うに及ばず、市営の図書館、プールが次々と閉鎖されている。この困窮財政を潤してくれるのが罰金である。罰金は市(地方自治体)の収入になるので、交通取締りの頻度は日本とは比べ物いにならない。例えばネズミ捕り。ドイツでは移動式のスピード違反の取締りが非常に多い。デユッセルドルフにある日本人学校前は時速30km/hなのだが、道路が広いので軽く40km/h、あるいはそれ以上のスピードが出てしまう。それをよく知っているデユッセルドルフの警察は、学校前でスピード違反の取締りを頻繁に行っている。ドイツでは(悪質な)スピード違反の罰金はお給料に比例する。以前、米国の有名企業の社長がハーレーでスピード違反を犯したが、その罰金は1万ユーロを超えた。雑魚を捕まえているよりも効率がいい。日本人学校に通っている生徒の両親も、そこそこいいお給料をもらっているので、警察には人気者だ。

ドイツの交通法規では制限速度を64%オーバーすると、「不注意でなく、故意にスピード違反を犯した。」とされて、罰金がぐっと重くなる。30km/hの道路なら、49.2km/hだ。市内の計測では3km/hは誤差として引かれるので、52.2km/h。この辺りからほぼ丸々一か月分のお給料が罰金になる。罰金は払えるとしても、3ヶ月の免許停止処分になる。すると仕事に差し支えるので、大きな問題になる。ここで弁護士保険が活躍する。ドイツでは警察がスピード違反を取り締まりを行う場合、計測器を道路と平行に設置してその作動環境を確認して、記録に残しておく必要がある。この記録がないと、スピード違反として記念写真を撮られた人は無罪となる。さらに記録があっても、そこに書かれたを計測器の設置の方法を見ると、ちょくちょく誤りがある。速度違反が正しく計測されたいたのは全体のわずか15%だったという数字も出ているので、「私が悪うございます。」と罪を認めるのは時期早尚かもしれない。特に免許かかっている場合は。

警察から、「あなたは○月○日にスピード違反を犯したとして告発されています。」という市からの手紙が届いたら、まずは弁護士に相談しよう。というのもスピード計測の記録を見ることができる権利、"Akteneinsicht"と言う、を持っているのは弁護士だけだ。交通関係の係争を専門としている"Fachanwalt"(専門弁護士)は何処を見れば警察の手落ちが指摘できるか、熟知してる。さらに過去の判例もよく知っているので、記録を見ると、「これは勝てる(あるいは勝てない)。」か、比較的素早く的確に判断できる。さらにこうした専門弁護士は奥の手も持っている。

ドイツでは裁判で有罪判定が確定するまでは、どんなに証拠が明白でも、無罪である。だから、例えスピード違反の計測に誤りがなく、「勝てそうにない。」という場合でも、ありとあらゆる口実をこしらえて裁判沙汰に持ち込むこともできる。ドイツの法廷は山のような裁判の数に押しつぶされているので、裁判になると判決まで1年も時間がかかることは珍しくもない。もし日本人駐在員の場合、「あと半年で帰国になります。」と言うなら、弁護士を使って時間稼ぎをする手もある。帰国後に有罪判決が出ても、すでに帰国しているので免停も関係ないし、日本でも仕事にも差し支えない。肝心の罰金だが、「スピード違反程度では日本まで追求されないので、払わない方法もあるのでは?」と言われる方も居るに違いない。確かにその通りだが、ドイツで犯した罰金はドイツだけでなく、EU全土で「指名手配」されるので注意されたい。すなわちロンドンへの出張でも入国管理でパスポートをスキャンされたら、ドイツから出ている罰金支払いの命令が画面に浮かび上がるので、そこで御用となる。こうした軽犯罪の時効は2年なので、2年間はドイツは言うに及ばず、EU入国には要注意である。

弁護士保険は、困ったときに使える便利な保険なので、車を購入したらこれにも加入しておこう。皆まで言えば、ドイツで仕事に就いたら、仕事関係の弁護士保険は当たり前。ドイツでは被雇用者の権利がかなり保障されているので、解雇されたら雇用主を訴えれば、まず負けることはない。例えば「病気です。」と会社を休んだ社員、実はマラソンに参加していた。運の悪いことにこのマラソンがテレビ中継されて、病気で会社を休んでいる社員が元気そうにマラソンを走っている姿がテレビで放映された。上司は彼を首にしたが、社員はこれを不当解雇として訴えて、勝ってしまった。そのくらい労働者の権利は保障されているので、雇用関係の裁判保険は欠かせない。賃貸関係の裁判係争は最も多く、弊社にいただく問い合わせの中でもやはり一番人気。余裕があればこれも加入したほうがいいし、日常の生活上のトラブルはドイツで生活をすると避けられないので、これも欲しい。こうした弁護士保険は、150ユーロ程度の自己負担金を払う形にすれば保険料が安くなる。もっともそれでは使い勝手が悪いので、できれば自己負担金なしの弁護士保険が使い勝手がいい。その辺は各自のご予算で決めてくださいまし。


"Und was nun jetzt?"
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