"Made in Italy" (02.10.2013)

日本人の好きなブランド品だが、ドイツ人は全く興味がない。1週間同じ服を着て平気な民族なので興味がないのか、それとも車や休暇などの他の品、目的に興味があるからなのか、その辺の所はわからない。ドイツでブランド品に興味を見せるのは本当のお金持ちだけ。会社員がお金をためて、ヴィトンのお財布を買うなど、ドイツでは有り得ない光景である。日本人のこのブランド品嗜好はどこから来るのだろう。ブランド品を購入する事により、自身の価値を上げようという空しい試みだろうか。その理由が何処にあるにしても、高い金を払って購入した自慢のブランド品が、タイの路上で買った中国製の偽ブランド品と(大して)変わらないと知ったら、ショックを受けるに違いない。

「ミラノの本店でコピーが売られているんだぞ。何も知らない観光客はわざわざイタリアまで来て、高い金を払ってコピーを買って帰る。hip.gifみたいだろ。」とは知人のイタリア人。奥さんがドイツでイタリア製のブランド品を販売しており、旦那がその宣伝を行うという典型的な(?)イタリア人のカップルだ。皆まで言えば、(美人の)娘はデザイナーになりたいという。当初は、何故、イタリアのブランド品を販売して生計を立てているイタリア人が、イタリア製のブランド品の悪口を言うのかよくわからなかった。おまけに(説明が悪いので)「まさか本店でコピーが売られてるわけがない。」と頭からこの話を信用しなかった。ところが実情は、そうではないようだ。

イタリア北部のトスカーナにあるPratoは人口18万人ほどの町。この町が他のイタリアの都市と違うのは、なんと5万人、すなわち人口の30%が中国人である事だ。この町にはブランド品の下請工場が多い。ここで日本人の大好きなブランド品が縫われて、ミラノなどの高級ブテイックは言うに及ばず、世界中の高級ブテイック店で販売されいる。ここで高級ブランド品になる前に、メーカーは職人の腕を必要としない簡単な仕事、ファスナーやボタンなどの取り付けを現地に住む中国人労働者に任せていた。その後、下準備の出来た生地はイタリア人職人の工場に運ばれて、高価なブランド品になる。これはすでに30年も前に始まったことで、何も今日に始まったことではない。

ところが日本を始めとして、ブランド品が世界各国で人気を集めると、メーカーはもっと多くの商品を生産して、儲けを増やすチャンスを見出した。ここで注目されたのが、これまでは下請工場で簡単な仕事をしていた中国人労働者である。値段の高いイタリア人職人を使わずに、中国人労働者に完成品まで縫わせてしまえば、製品が1/10の値段で製造できてしまう。中国人が縫おうが、イタリア人の熟練工が縫おうが、"Made in Italy"には違いがない。そう考えたメーカーはオリジナルの生地を現地の中国人渡して、中国人にブランド品を縫わせることにした。これがきっかけになり近年、イタリアの北部では中国人労働者の大移動が始まり、中国人移民の数は3倍、20万人に急上昇した。

中国からやってきた労働者は(大概、違法就労なので)、イタリア人労働者のような労働環境は必要はなく、地下に設けられた換気の悪い部屋に閉じ込められて1日12時間も働く。こうした工場で縫われた"Made in Italy"のTシャツは、なんと3ユーロ50セントという激安の値段である。工場主の中国人は、「500着買ってくれれば、1着、2ユーロ75セントまで割引するぞ。」と笑いながら付け加えた。バイヤーを演じているレポーターが、「完成までに何週間かかる。」と聞けば、「朝から晩まで働かすので、1週間で完成する。」と急なオーダーにも対応できる柔軟性を見せている。この値段にイタリアの地場の繊維工場が太刀打ちできる筈はなく、次々と倒産する憂き目にあっている。

イタリアのブランド品メーカーは、「イタリア人の熟練工だろうが、中国人の地下工場であれば、"Made in Italy"には変わりがない。」なら、「何でわざわざ高い熟練工を使う必要がある。」と儲けに目がくらんで、危険に気づいていない。イタリアの地下工場で中国人の違法就労者に縫われたブランド品と、タイや香港の路上で販売されている「本当の偽物」と、一体何処が違うのだろう。事実が知れ渡れば、「そんな製品に大金を払うのは馬鹿馬鹿しい。」と消費者(日本人)が考えですのも、そう遠い日の事ではない。これが理由で冒頭のイタリア人は、こイタリアのブランド品の将来を心配していたのだ。

このイタリア人の心配は、杞憂ではなかった。イタリア人は中国人を、「真似するしか能がない。」とみくびっていた。ところが中国人はブランド品を製造することでノウハウを取得すると、最近ではイタリアで独自のブランドを開発、言うまでもなく中国人労働者を使用して、"Made in Italy"のブランド品を開発、世界に輸出する「逆輸入」現象まで起きている。日本人にしてみれば、"Made in Italy"には違いないので、日本国内で人気がでるかもしれない。将来は中国人デザイナーがデザイン、中国人企業家が製造、中国人労働者が縫った中国人による、"Made in Italy"のブランド品が、イタリアのブランド業界を席巻するかもしれない。


"Made in Italy"
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