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ドイツで始める株式投資 その弐 (31.08.2013)

「一株でも買えますか。」とは、株式投資に興味を持ち始めた方からの質問。勿論、1株だって買えます。もっとも株を売買すると、銀行に手数料を払う必要があります。手数料は銀行により大きく異なり、5ユーロで済む銀行もあれば、40ユーロ近く取る銀行もあります。すなわち1株だけ買うと、損をするだけ。なのに1株だけ買ってどうするんだろう。まあ、それは人の勝手ですね。そうかと思えば、「日本だったらご優待券なんかもらえるんですが。ドイツではどうですか。」と他の日本人の方から。(ドイツの)株式はデパートの年末大安売りではないので、福袋もなければご優待券もないです。株主は年1回、株主総会に出る機会があるだけです。

決心したら、株式売買の口座"Depot"を開設しよう。普通は口座を持っている銀行にて開設するもの。以前はどこの銀行も1オーダー10ユーロだったが、2010年頃から一斉に値上げ、大手の銀行は10~40ユーロの手数料を取るようになった。これを嫌って、手数料の安いオンライン銀行/ブローカーに口座を開設する人も多い。もっとも「1オーダー5ユーロポッキリ!*」という宣伝文句の*の部分を読んでみると、「最初の半年だけ。以後、10ユーロ。」と書かれている。「1年だけでも十分!」という人は少数派で、「わざわざ別の株式取引口座を設けるのは面倒!」と、結局は預金のある銀行にてDepotを設けるケースが大半だ。もっともその他に隠れた手数料もある。某大手の銀行で(例えば)50株のオーダーを出しても、50株まとめて買わないで、10株+40株という買い方をする。俗に言う「スプリット」である。こうして銀行は二度も手数料を取ることができる。もしオンラインブローカーがオーダーをスプリットしないで10ユーロで済むならば、そこにDepotを設ける価値はあるかもしれない。

取引口座を開く際に、「あなたはどんなタイプの投資家ですか。」というお決まりの質問をされる。ここで「最大20%程度の損益なら我慢できる。」という危険を回避した慎重な投資家のタイプを択ぶと、後で困る事になる。慎重な投資家で登録されてしまうと、DAXと一部のMDAXのタイトルが変えるだけ。変動の大きい株は「あなたのリスクでは買えません。」というメッセージが出て、オーダーが入らない。この査定は後から撤回/修正できるが、時間がかかる上、面倒。最初の段階であまり慎重な査定をするのは避けておこう。

取引口座を開いてしまえば、あとは買うだけ。問題は何処でどうやって買うか。ドイツには金融業の中心地フランクフルトだけではなく、ベルリン、ミュンヘン、デユッセルドルフ、シュトットガルトにも株式市場があるので、どこの市場で買うか市場を決める必要がある。と言えば、「えっ、どこにすればいいの?」と面倒に思えるが、これは実に簡単。売買されている株の数、種類、取引手数料、どれをとってもXetraが一番。証券などを買わない場合、何も考えずにXetraにすればいい。「Xetraって何なの?」という方の為に説明しておくと、これは純粋なオンライン市場。すべて自動化されているので、手数料が安い。当然の成り行きとして、ここで取引される株式の数は群を抜いて多い。勿論、「電話でオーダーしたい!」と言う方は電話を使用することもできるか、デイーラーが入るとオーダー料が高くなる。

面白いことに株の買い方に、その人の性格が出る。株が上昇を始めるとその銘柄に相乗り、自分では何も下調べしないで、そこそこの儲けを期待する人。そうかと思えば、株価がガックリ下がるを待って、「明日からは上がる!」と大儲けを期待して株を買う人。あなたが投資するならば、どちらのタイプだろう。儲けをする確立が高いのは前者の方。一度上昇を始めると10~20%上昇するケースが多い。「相乗りして10%上昇したら、売却。」という簡単な戦術だと、滅多に損をする事がない。逆に一度下降を始めると、20~30%も下落することも珍しくない。だから下落している株を買うのは慎重に。ドイツではそのような傾向にある銘柄を"ein fallendes Messer"(落下中のナイフ)という。落下中のナイフを掴むと血だらけになるように、落下中の株を買うとDepotは真っ赤になるという意味である。そうそう、不思議な事に日本では株価が上昇すると赤字で表示されている。世界広しといえど、これは日本だけ。他の国では、赤は赤字である。

この機会に、ドイツ株式の歴史も紹介してみよう。日本ではその昔、NTTが民営化されると株価は高騰、1株300万円を超えた。そこまでひどくはなかったが、ドイツでもテレコムが民営化されると、大人気を博した。"Volksaktien"「国民株」と呼ばれて、なんと1株の価格が100ユーロを越えた。アナリストは、「200ユーロも夢ではない。」と"kaufen"(購入すべき)と推薦を出した。これが原因で、何も知らない素人は100ユーロで株を売らずに、株価が200ユーロに達する日を夢見た。ところがNTT株がかってない暴落をしたように、テレコム株はそれから10年間下落を続けて、ようやく8ユーロで底値に達した。実に90%を楽勝で超える下落である。ドイツには未だに100ユーロで購入したテレコム株を保有している人が多く、国民株と呼ばれる由縁である。

リーマンショックで株価は軒並み暴落したが、特に銀行株はひどかった。一時、120ユーロを記録したドイツ銀行の株は2009年に16ユーロを記録した。86%もの暴落である。2013年になっても33~37ユーロの間を動いているだけで、今後も大きな回復は見込まれていない。しかし暴落のトップはドイツ第二の銀行Commerzbankである。リーマンショックの前、22ユーロを記録して、「30ユーロも夢ではない。」とアナリストはこの株を買うように勧めた。市場のシェアを拡張すべく、頭取は当時すでに不良債権の宝庫と化していたDresdner Bankを買収すると決断、こうしてCommerzbankの崩壊が始まった。夢から覚めると、この銀行の数は30ユーロどころか、2013年には56セントにまで落ちた。銀行は、「これじゃかっこわるい。」と10株まとめて1株にするという裏技を発揮したが、事実上97%を超える暴落である。皆まで言えば、Dresdner Bankの買収時まだ残っていた頭取の髪は、株価と同じ運命を辿った。

未だに業績悪化を続ける業界が2つある。電力と鉄鋼業界である。E.ONはドイツ最大の電力会社、すなわち日本の東京電力に匹敵する電力会社だが、リーマンショック前は株価は50ユーロを超えていた。リーマンショックで19ユーロまで下落、やっと25ユーロまで回復したと思ったら、福島ショックがやってきた。株価は13ユーロにまで下落したが、これが終わりではなかった。政府が原発廃止を決定、電力不足を補うべく、太陽発電、風力発電に補助金で出すとドイツでは一気に一攫千金ムードに沸いた。農家はでかい家畜小屋、納屋の屋根に太陽発電パネルを置くだけで、政府の補助金が雨のように降ってきた。面倒な家畜や作物の世話をしなくても、これまで稼いだ以上の金がはいってきた。これを見た隣の農家は、「目指せ、一攫千金!」とまずは納屋を必要もないに大拡張、その新しい屋根の上に燦燦と輝く太陽パネルを載せた。寛大な補助金のお陰で納屋拡張の費用はわずか数年で銀行に返却できて、あとは笑いながら余生が過ごせる事となった。

こうしてドイツ中が補助金フィーバーに沸いたが、貧乏くじを引いたのは補助金を可能にする為に値上げされた電気代を払う消費者と電力会社だった。「代替エネルギーを優先する。」という政府のお達しで、天気のいい夏には電気が過剰供給状態、ガスや石炭発電所は休憩を余儀なくされた。しかし発電所は、「稼動してなんぼ。」である。休憩していては、経費(社員のお給料)だけ発生して大赤字である。挙句の果てには過剰供給で、電気の値段が下落を始めた。特に製鉄製銅業などの大手の客への電気価格が半減すると、電力会社の儲けも半減した。それだけでは済まず、今度はガスの値段も下がってきた。"Schiefergas"と呼ばれる天然ガスの採掘が米国を始めとして盛んになり、過剰供給の状態になってきたのが原因である。しかし、大手の電力会社はロシアのガスプロムと10年契約をしており、値段の変更は不可能。結局、消費者に購入価格でそのまま売るか、あるいは購入価格から値引きして赤字でガスを売るという有様だった。こうしてE.ONの株価は福島ショックでも経験しなかった底値、11.80ユーロまで下落した。当然、ここまで落ちれば少しは回復するだろうが、しばらくは大きな回復は見込まれない。
 
その電力業界よりもひどい惨状に直面しているのが鉄鋼業界だ。2008年まで「いけいけどんどん!」で設備投資、ブラジル、アメリカ、中国など今後の発展が見込まれる国で次々に工場を建てた。折からの不景気で鉄製品への需要が減ったが、設備投資した新品の工場は残った。ドイツ最大の鉄鋼(及び軍需)複合体のThyssenKrupp社は、中国の土建会社に作らせたブラジルの製鉄所が故障ばかりで運休状態。お陰で大赤字。これえを売ろうにも、二束三文も値段しかつかないので、第二次大戦敗北以来の危機に襲われている。同社は会 社の根幹である鉄鋼業を放棄して、エレベーターや潜水艦、駆逐艦などの製造を行う第二のジーメンスになる計画を模索しているほど、鉄鋼業界はお先真っ暗だ。ドイツで第二の規模を誇る鉄鋼会社、Salzgitterはリーマンショック前に株価が170ユーロ直前にまで高騰して、MDAXからDAXに昇格、「200ユーロを突破するのは時間の問題。」とまで言われていた。ところがリーマンショック後、株価は毎年半減を続け、DAXからMDAXに降格、2013年には株価が24ユーロにまで下落した。実に85%を超える暴落である。
         
逆に見事な復活を成し遂げたのがタイヤで有名なContinental社だ。この会社はライバル社に敵対買収されたが、買収に必要な資金を銀行に借りすぎた。さらにリーマンショックが及ぼした不況で親会社が経営不振に陥り、子会社のContinentalも同じ運命に巻き込まれた。株価は10ユーロにまで下落、DAXからMDAXに降格した。ところがである。ここから夢のような回復が始まった。株価は上昇に上昇を続け、2013年には120ユーロを突破して、MDAXからDAXにカムバックを果たした。2009年に10ユーロの底値で買った勇気のある人がいれば、4年で投資額を12倍にする事ができた。
         
これまで不況に喘いでいた欧州で、ようやく経済回復の兆しが見えてきた。欧州の買い付けマネージャーインデックスが2ヶ月連続で(経済成長を示す)50を超えた。今後、欧州で本当に経済が回復すれば、欧州の株式市場が盛況する事は間違いない。実際、アジア市場から大幅な投資金が回収されており、アジアの株式市場は真っ赤に染まっている。アジアから撤収された資金は行き場を探しており、これが欧州市場に流れ出すと、2013年末には大きなラリーがあるかもしれない。それとも中央銀行の金利政策の変更で、大きな暴落が来るか。それは誰にもわからない。近い将来必要になるお金を投資するのだけはやめておこう。


株価22ユーロ。
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2013年、株価56セント。
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