ドイツで始める株式投資 その壱  (05.08.2013)

「低金利なので、口座にお金を置いておいても損をするだけですよ。」とはTargobankの銀行員。銀行は顧客の口座を毎月チェック、現金が残っていると、「これはいい鴨。」とセールス電話がかかってくる。ドイツではセールス電話は(詐欺が多くて毎年、数多くの被害者が出ているので)禁止されている。口座を置いている銀行、契約を結んでいる保険会社でもこれは例外ではない。例外はひとつだけ。「投資をしたいから、電話をしてください。」と客の方から電話を要請した場合だ。それ以外は禁止されている。にもかかわず、このようなセールス電話がかかってきたら、用件を聞かないで電話を切ってしまおう。最近は日本語でセールス電話をかけている輩も居るので要注意。違法の手段でセールスをかけてくる相手に耳を傾けて、得をする事はない。

話を元に戻そう。Targobank、数年前まではCitibankという看板で営業しており、とりわけリーマン証券の販売に熱心だった銀行である。親銀行が投資で大火傷、国からの救済金で人工呼吸、瀕死の状態だった。親銀行の負担を軽減する為に、「金のなる木」だったドイツの支店網は売りに出された。こうして銀行の看板は変わったが、中身(従業員)は同じ。そんな銀行(員)を信用するわけがない。「じゃ、どうして銀行を変えないんですか。」と不思議に思われる日本人の方も少なくない。じゃ、どこの銀行にすればいいのだろう。地方自治体が経営に関与しているSparkasseだろうか。しかしこの銀行はTargobank同様にリーマンの紙屑証券の販売に熱心だった。じゃ、ドイツ銀行だろうか。しかしこの銀行のスキャンダルは快挙に暇がない。では、小市民の味方、郵便局だろうか。しかしドイツの郵便局だって、「ドイツ最大の詐欺団」を顧客に差し向けていたではないか。ドイツでは何処の銀行に口座を置いても同じ。貯蓄を守るには、こちらが賢くならなくてはならない。「〇〇とはさみのも使いよう」である。

不況を脱出した米国、脱出しつつある日本と違い、欧州は不況の真っ只中。かってない長期のマイナス経済成長が続く中、欧州中央銀行は利率をユーロ導入後最低の0.5%に設定した。欧州銀行総裁は、「必要ならばさらなる処置も厭わない。」と発言、定期預金者にため息をもたらしたが、株式市場に強烈な追い風を送り込んだ。金利が下がり、さらにここ数年これが上昇する見込みがないと、保険会社などは顧客に約束した年金の利回りを確保する為に、株式市場に投資するしかない。ドイツ連邦銀行発行の10年物の国債の利回りが1.25%という時代では、他に方法がない。スペインやイタリアの国債に投資すれば利回りは高いが、ギリシャの国債が大幅に「ヘアカット」されて丸坊主同然にされた事を考えれば、リスクが高すぎる。

こうして金が株式市場に大規模に流れ込み、次々に歴史的な最高値を更新した。肝心の経済はまだまだ回復していないのに、株式市場はまるでバブル経済時のような盛況振り。毎日のように「過去最高」を更新すると、「私だけ儲け損をしている。」と思い込み、「私も株に投資してみたいです。」という人が多くなる。こうしてまた株式市場に個人投資家の金が流れ込み、株価上昇がしばらく続く事になる。しかし、株で儲けるには「安く買って、高く売る。」事が原則である。株が過去最高を更新しいるときに、「発車している電車に飛び乗る。」のは危険だ。勿論、「高く買って、もっと高く売る。」事も不可能でないが、株価は一方通行ではない。高くあがるほど、それだけ落ちる危険が高くなる。いい例がフォルクスワーゲンの株。一時期1株1000ユーロを越えたが、急降下。フォルクスワーゲンの敵対買収を試みたポルシェは壊滅的なダメージを受けて、フォルクスワーゲンに買収されてしまった。

株に投資するなら、株価が安いときに買おう。安いといっても倒産寸前の会社の株ではなく、2008年の大暴落のように、世界的な大企業の株がバーゲン価格で買える時期に買うべきである。ところが面白いもので、10年に一度のチャンスが到来しても、「怖い。」と誰も食指を伸ばそうとしない。逆に株価が高騰して過去最高を記録すると、「私も買いたい。」となるのだから人間の心理は不思議なものである。なにはともあれ、預金でで0.5%、生命保険で1.7%の利回りしかなく、インフレーションが1.6%の今、投資をする以外に預金を守る方法はない

そこで今回はドイツの株式市場/投資について紹介してみよう。米国のDow Jonesに相当するのが"Deutsche Aktienindex"、通称DAXだ。このインデックスにはドイツを代表する30の大企業が上場されているので、「ドイツ流」の方ならば、ほとんどの会社の名前は知っているはずだ。その下に位置しているのが"MDAX"で、50社が上場されている2部リーグだ。会社が成長すると一部リーグのDAXに昇進することもあれば、株価が低迷するとDAXからMDAXに降格する事もある。その下にはSDAX TecDAXがあり、ここに上場できない企業は"IPO"(initial public offering)として上場される。その他にも"Eurostoxx50"という欧州でトップの50社が上場される株式市場もあるが、最初から風呂敷を広げてしまうと先に進まないので、今回はドイツ国内の企業/株式市場に限っておきます。

「株に投資して一発大儲け!」を狙う人はIPOに投資する人が多い。無名な会社が多く、株価も安いので、「噂」だけで株式が大きく変動する。うまくいけば大儲けするが、小さなニュースで株価が大きく変動するので、毎日、それも数時間おきに動向をチェックする必要があり、素人には向いていない。素人が投資をするなら、DAX、あるいはMDAXあたりが比較的、危険が低くて適当だ。とは言っても、DAXとMDAXだけで80社もある。一体、どの銘柄に投資すればいいのだろう。そういう人の為に、ドイツ(日本でも同じ筈だ)には投資専用のテレビ番組、各種の雑誌が存在して、購読者を競っている。ここで情報を仕入れてみよう。

大事なのは、見た聞いた読んだ情報を100%鵜呑みにしないこと。情報は、誰かが(往々にして根拠もなく)主張している意見に過ぎない。自分が買った銘柄の株価を押し上げる為に、テレビ番組や雑誌を利用して「絶対にお勧め!」と推薦を書く人もいる。読者がこれを信用して株を購入すると株が急上昇する。これを狙ってこっそり株を売って、大儲け。理由もなく上昇した株価は、1~2週間すると下落して投資家は大火傷を負うことになる。勿論、これは株価操作なので違法である。しかしその立場を利用して一儲けをたくらむ妨げにはならないようだ。毎年、株価操作で有罪判決を受ける記者、テレビの解説者は後を絶たない。

もっとひどいのは「投資会社」と称して会社を設立、「どこに投資したらいいのかわからない。」という個人投資家から金を集め、これを投資しないで自分の豪華絢爛な生活に浪費する「投資家」も定期的に摘発されている。典型的な例は、フランクフルトのS&K。「12%の配当金を支払います。」という殺し文句で投資家を釣った。低金利のこの時期、8%を超える配当金を約束する宣伝には要注意。8%を超える利率を約束するファンドは、危険な投資に手を出すか、あるいは詐欺のどちらかだ。前者の場合はしばらくはうまく行くが、その後、大きな落とし穴が待っている。後者の場合は、もっと早く夢から覚めることができる。

S&Kはその宣伝文句に信憑性を与えるため、「この不動産に投資して、これだけの利回りを確保しました。」という夢のようなパンフレットを作り上げた。不動産を買い上げて、これを転売するだけで夢のような利回りが継続して出ているというのだ。これが本当かどうか確かめるには、そのパンフレットに書かれている「販売価格」を実際の市場価格と比較するだけでよかったのに、誰もこれをしなかった。通常は商品の安全性をテストしているTUEVもこれに騙されて、「合格証」を出してしまった。さらには上述の株式雑誌も騙されて、「この投資は確実。」とやってしまった。こうしてプロの不動産ファンドも自分で不動産に投資しないで、このS&Kに投資をする始末だった。名前が売れるとさらに投資家の数が増えた。こうして集めた金で、最初の投資家への利回りを払う事で信用を獲得した。「12%も利回りが出るわけがない。いつかは破綻する。」と警告しても、砂漠で唱える仏法のように、相手にしてもらえなかった。

実際のところ、「投資します。」という約束で集めた金の大半は、古い客への配当金を支払う為か、経営者の豪華絢爛な生活を可能にするのに使われた。典型的なねずみ講で、集めた金が投資される事はなかった。2月になってようやく検察が動いて、S&Kの事務所を家宅捜査、現金、車、オートバイなどに動産を押収した。こうして同社はあっけなく倒産して、1億ユーロを超える金と数多い個人投資家の夢が消えた。しかし被害はそれだけでは収まらなかった。

同社の倒産は、この会社に投資していた投資ファンドの運営資金に、ぽっかりと大きな穴が空けてしまった。投資家に金を返そうにも、ふれる袖がないのである。こうして真面目な投資ファンドも、相次いで心中倒産する憂き目にあった。巡り巡ってS&Kに投資をしていない投資家までも、被害に遭う結果となった。ドイツにはねずみ講詐欺を防ぐ国の機関"bafin"も存在しているのだが、国の機関らしくすでに倒産していたリーマンに3億ユーロ送金してお金を掏ったことで有名になったように、硬直しきった官僚組織で全く役に立っていない。上述のTUEVは、詐欺に合格証を出してしまったため、お金をすってしまった投資からの損害賠償請求が舞い込んだが、「投資の内部までチェックしてわけじゃありません。」と言い訳をしているが、それでよく合格証なんぞ出せるものだ。

こうした背景があり、ドイツ(日本でも同じ筈)で投資しようとするなら、遅かれ、早かれ、自分で勉強する道は避けて通れない。一番簡単な投資の方法は、DAXの動きに連鎖している証券を買うこと。DAXが10%上昇すれば10%儲かる。10%下がれば10%損をする。銘柄を択ぶ必要もなく、これほど簡単な投資はない。10年前、DAXは3000代であった。過去10年間、大きなクラッシュが2回あったにも関わらず回復、現在はその2倍強の8000代で、「今年中に9000代に達する。」と言う楽天家もかなり増えてきた。長期的な視野で投資をすれば、お金をするよりも儲かる確立の方が高い。もっともだからと言って今の8000代で買えば、10年後には16000代になっているというものではない。

10年前、国民の間で投資が大流行、ドイツテレコムの株は人気を博して100ユーロを超え、DAXは一時8000代を記録した。その後、バブル(正確には、"Dot-com bubble"と言う。)が見事にはじけた。テレコムの株は90%暴落したが、まだいい方だった。存在することを辞めた会社も多く、株は紙屑と化した。当時、DAXは2年間も続落を続け、ようやく3000代まで暴落して安定した。これを教訓にドイツの株式市場では、DAX, MDAX, SDAX, TecDaxというプラットフォームが誕生して、株の危険度が一目でわかるようにした。すなわち10年前の大クラッシュを消化するまでに、10年ほどかかったということになる。これはまだいい方で、日本では80年代のバブル経済時、日経が4万円台に達した。あれから20年に近く経っているのに、未だに回復していない。

尚、証券は上述の通り自分で勉強する手間が省けるが、当然、その分、手数料がかかる。又、これを出している銀行なり証券会社が、「この証券を閉めます。」などと急に言い出す事もちょくちょくある。証券会社が証券を秘めると、たっぷり手数料を取ってから、残金を投資家に返金するので大赤字である。こうした危険を避けるため、その証券はどのくらい長く存在しているのか、チェックを忘れずに。過去20年存在している証券なら、今後、10年存在する確立が高い。しかし保証はない。ガスの動きに合わせたガス証券、オイルの動きに合わせたオイル証券などは、"open-end"(無期限)と書かれているのに、5年も経たないで閉鎖されるので、要注意だ。その分、株を買えば安心だ。ドイツ銀行は今後10年後、20年後だって存在しいるからだ。もっともリーマンショック後、株価はろくに回復しておらず、ユーロ危機が再燃する度に、銀行株は暴落している。

などと危険ばかりを考えていては何もできない。自分の好みにあった銘柄を幾つか択んで、投資してみるのが一番効果的。株式情報を提供しているサイトでは、"Mein Depot"という機能があり、ここに架空の株式口座を設け、株を売買できる。知り合いなどと一緒に投資額を決めて、架空の株式市場で取引してみよう。半年後に会合して、誰が一番儲けたか競えば、とてもいい勉強になる。ここで勉強をしてから、投資が自分に合っているかどうか判断、それから投資を始めてみてはどうだろう。もっともシュミレーションで大儲けしたからと言って、「俺は株の天才。」と自信過剰にならないように。シュミレーションと真面目に働いた金を賭けるのは、雲泥の差がある。


「投資会社」を検察が急襲、
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"Bundesbank"の刻印が入った金の山、
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高級車、
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オートバイを押収した。
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