シールで環境を守れ! (19.05.2013)

「あっれ?」車を道脇の駐車スペースに停めて、「いざ、トレーニング。」と歩き出したものの、周囲に停まっている車を見て立ち止まり。フロントガラスにシールが貼ってある。これは、"Umweltplakette"と呼ばれるもので、排ガスに悩まされる大都市が市内の空気汚染を防ぐという名目で導入した代物。そこまでは知っているのだが、このシールはその意味(効果)に疑問があり、ドイツ全土で導入される事はなかった。ベルリンやミュンヘンのような大都市、あるいは緑の党が政権についている南の町で導入された事は聞いていたのだが、デユッセルドルフでこのシールを見かける事が腑に落ちなかった。「ケルンからの車じゃないか。」と思いナンバープレート確認するが、そこには「D」、すなわちデユッセルドルフと書かれている。

「この車の保有者が、ケルンなどの大都市に通勤するのでこのシールを張っている。」と辻褄のいい理由を考えて納得。ところがである。その先の車にもこのシールが張ってある。「この車の保有者が、ハンブルクなどの大都市から引っ越して通きたのでこのシールを張っている。」と辻褄のいい理由を考えて納得。ところがである。その先の車にもこのシールが張ってある。ナンバープレートはやはりデユッセルドルフ。ここまで「偶然」が重なると、現実を受け入れるしかない。周囲で聞いてみると「2年くらい前に導入されたぞ。」という話。全く、知らなかった。一体、いつの間に?きっと休暇でタイやベトナムに行っている間に導入されたに違いない。

この"Umweltplakette"は都市部におけるスモッグの発生を避けるため、この原因とされている窒素酸化物とデイーゼルエンジンから排出される煤などの"Feinstaub"(細かい埃という意味)の放出を防ぐ目的で2006年に国会で決議され、2007年に導入された。厳密を期すならば、居住地区の空気を汚染から守るべく、その区域を"Umweltzone"(環境ゾーン)に指定した。この保護区域に車で入るには、"Umweltplakette"と呼ばれるシールをフロントグラスに(購入して)貼ることが義務化されたわけである。当初は人口が多い大都市、ケルンやベルリン、あるいは環境保護都市の最先端を行くフライブルクのような都市で導入された。「デユッセルドルフはおかしな緑病に犯されていなくて良かった。」と楽観していたが、記録を見てみるとなんと2009年2月に導入されていた

このシールには、説明しなくても誰でにでもわかるように、緑、黄、赤色の3色に分かれている。ガソリンエンジンであれば、2サイクルエンジンや余程古い車でない限り、緑色のシールになる。デイーゼルエンジンでも煤フィルターが付いていれば、通常は緑色のシールが貰える。シール中央部の大きな4は、"Schadstoffgruppe 4"(汚染グループ4)の意味で、一番汚染度の少ないことを意味している。当然、保護区域への乗り入れは、問題ない。これに続くのが黄色のシールで、古いガソリンエンジンや、フィルターのないデイーゼルエンジン車がこれに相当する。信号と同じく、「急いで進め。」という意味ではなく、このシールは危険を示し、数年後には市内への乗り入れが禁止される。ドイツは連邦制なので、その時期は地方自治体が設定する。フライブルクのような環境都市では、2013年1月から市内乗り入れ禁止になっている。遅くとも2015年には環境地区全土で乗り入れ禁止になるので、中古車を購入される場合、この点に注意しよう。最後の赤色のシールは、保護区域への乗り入れ禁止。これは主にトラックなどの大型車両が対象になっている。

言うまでもなく、環境保護区域を指定して車にシールを張るだけでは空気汚染度の改善にはならない。もっともフライブルクのような環境推進派は、「大いに意味がある。」と反対を主張する。そこでフランクフルト大学が環境保護区域の導入前と導入後で空気の汚染度を図ってみた。案の定、環境保護区域導入による改善は発見できなかった。この為、この制度には、「ただの金集め。」という批判が多い。この法令がその効果を発揮できないもうひとつの原因として、例外条項が挙げられる。環境汚染の張本人である工事現場の大型の機械、農場で使用するトラクター、河川を航行する艀、船、工場の機械、さらに軍事車両などは、この法令から解放されている。日本と違って、河川を利用して原材料を工場まで運ぶドイツでは、艀が出す煤の量は比較にならないほど多い。こうした環境汚染の源を放ったらかしにして、(主に)古い乗用車だけを制限しても、その効果はたかが知れている。

こうした背景があっての事か、この"Umweltplakette"はインターネットで5ユーロほどで買えてしまう。勿論、緑色のシールが。(黄色、赤色などを買う人はいない。)中には偽物もあるが、大方は本物である。車検場で本物を発行してもらっても10ユーロ程度(市により値段が異なります。)なので、5ユーロを節約する為の、販売ではない。実際には黄色のシールしかもらえない人が、インターネットで緑色のシールを購入して、法令を回避しているのである。こうしてこの法令はますますその意味を失っている。「どうしてインターネットで本物のシールが買えるのですか。」とドイツの事情に詳しくない方に説明しておくと、このシールは車検場、あるいは排気ガス測定器のある修理工場で発行できる。仕入れ値は1枚、1ユーロもかからない上、前述の条件を満たせば、好きなだけ注文できてしまう。そこで数千枚注文、これをネットで「安価販売」するのである。1枚あたりたかが4ユーロ程度の儲けでも、千枚で4000ユーロの儲けである。いいお小遣いになる。こうしてシールのネット販売が栄える事となっている。

自家用車はガソリンエンジン。インターネットで詐欺の傍らを担がなくても、緑のシールが貰えるので、近くの車検場、Dekraでこれを発行してもらった。10ユーロ。不思議なのはこの法令が導入されてからほぼ4年も経っているのに、一度も違反キップをもらわなかった事。一度は「あのフライブルク」で駐車違反の切符をもらい、去年はデユッセルドルフで交通事故、警察を呼んで現場検証をしてもらったのだが、シールがなくてもお咎めなし。ちなみにシールが貼っていないと罰金40ユーロ。スピード違反などの罰金で市の財政をカバーしている地右方自治体が、みすみす「金のなる木」を見過ごすとは思えない、これは一体、どうした事だろう。

地方自治体では「"Umweltplakette"は正しくない。」という認識があるようで、違反キップをきっている"Politesse"に「寛大な措置」を取る様にこっそり指示を出している。現在、55の都市で"Umweltzone"が導入されているが、真面目にこれをチェックしているのは借金で首が回らないベルリンや、杓子定規で物を見るフランクフルトなどの都市で、3">5都市(全体の2/3)、よりによって真っ先にこの"Umweltplakette"を導入したケルンなどでは、違反キップを切る事は滅多にないという。道理でこれまで違反キップを切られなかったわけだ。逆に警察は偽のシールの摘発を行っているというから、全くおかしな、しかしドイツらしい現象である。


環境を守ってくれる"Umweltplakette"。
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