雷に当たる日。 (12.10.2012)

「買わなきゃ、勝てませんよ。」と、ある日本人マダム。ドイツ版宝くじ、"Lotto "の事である。この宝くじで、「ジャックポット」が当たる確立は、1/1400万。雷に遭って死亡する確率が1/100万なので、ジャックポットに当たって大金持ちになり、日々、お金の心配をしなくてもよくなる前に、14回雷当たって死亡する計算になる。仏教徒ならやっと15回目の人生で、ジャックポットに当たる事が可能になる。気の長い話だが、"Die Hoffnung stirbt zuletzt."(希望は最後に潰える。)という通り、このわずかな希望にすがっている人は多い。それで日々の生活が耐えやすくなるなら、それはそれで結構な事ではないだろうか。

問題は、「買う回数が増えれば、それだけ当たる確立が大きくなる。」と「絶対に負けない方法」を考案、これを実行に移す人が居る事だ。知り合いのトルコ人は、「お前が人生で稼げる以上のお金をカジノで掏った。」と威張って語ってくれる。借金の取立てに追われ、生活保護で生活、金に困って犯罪を犯し、二度も刑務所に滞在したのにまだ懲りていないらしく、「今、辞めたらこれまで投入した金が無駄になる。」と意気揚々である。資金繰りに困って犯罪を犯し、またしばらく姿が見えなくなるのは、そんなに遠い日の事ではなさそうだ。

意思の弱い人は、何もトルコ人だけではない。日本人でも、「アーヘンのカジノに出かけて、一儲けしてきませんか。」と、不幸の道ずれを探していた日本人も居る。「アーヘンまでの遠征はしんどい。」とお嘆きの貴兄にお勧めするのが、市内の街角にある"Spielcasino"だ。ドイツでは風俗関係、賭博関係の店舗が営業できる地区が決まっているので、風俗関係の店があれば、近くに必ずこの「カジノ」の店舗がある。ここには日本のゲームセンターのような"Spielautomaten"(自動賭博機)が設置されており、コインではなく現金を入れて勝負をする。ドイツにはパチンコがないから、その代用みたいなものだ。ここで賭博をやっている人の多くは依存症にかかっており、ほぼ毎日のようにやってくると最後の1ユーロまで使い果たすと、バスに乗る金もないので、肩を落としてトボトボと徒歩で帰宅している。

こうした賭博依存症の一人が、「依存症の俺をカジノの入れた経営者は、掏った金を返すべきだ。」とハンブルクの裁判所に訴えた。日本ならば裁判所が訴えを受理するかどうかさえ疑わしいが、ドイツの裁判所はこの訴えを受理したばかりではなく、原告の主張を認めて、「賭博場の経営者に、5万7699ユーロと29セント+利子を原告に支払うように命じた。」まさにドイツならではの判決だろう。「じゃ、俺もカジノを訴えてやろう。」と安直に思われる方が居るかもしれないが、そう簡単にはいかない。このケースではカジノが原告の依存症を知っており、「依存症の方、入場お断り。」と言っておきながら、「頼むから、今日だけ。」という願いに負けて、入場を数年間に渡って許していた事が指摘、証明されたので、このような判決になった。

もうひとつ面白い例があるので、紹介しておこう。ドイツとオーストリアの国境町、Bregenzにてスイス人がカジノに入って自動賭博機で運命を試すことにしたが、今日は「雷に当たる日」だった。お金を入れるとスロットマシーンが回りだし、幸運を願ってストップボタンを押した。するとマシーンの動きが一瞬止まったが、しばらくして動き出すとサイレンが鳴り始め、「ジャックポット 4300万ユーロ!」と賞金が表示された。喜び勇んだスイス人は携帯電話でこの賞金額を撮影、一生の思い出を作った。ところがである。このジャックポットを見たカジノの経営者の顔つきが変わり怒り心頭、哀れなスイス人は一セントももらえる事なく、カジノから追い出されてしまった。

そんな横暴をスイス人が黙って許す筈もなく、オーストリアの弁護士を通して、カジノ オーストリアに対して4300億ユーロの賞金の支払いを求めた。カジノ側は、「ジャックポットなんかなかった。」と事実を頭から拒否した。ところが運の悪い事に、スイス人が携帯電話で撮った動画が証拠として存在していた。これを提示されたカジノは、「ソフトのエラーである。元来、賞金が100万以上出る事はある得ない。そんな事は客も承知していた。」と新しい理由を持ち出して、支払いを拒否した。スイス人は、「そんな事は全く知らないし、知る由もなし。」と反論、氏の弁護士も、「例えソフトのエラーであっても、賭博上経営者は賞金を払う義務がある。」と主張、4300億ユーロの支払いを求める訴えをオーストリアの法廷に出したので、この一件は周知の知る事となり、それは大きなニュースになった。

カジノ経営者は判決が長引くと、「このカジノは、賞金が当たっても支払いを拒否する。」と悪い噂が広まる事を懸念、原告に50万ユーロの和解金の支払いをい提示したが、「お話にならない。」として原告はこの提案を蹴った。公判になるとますます大衆紙の注目を浴びてしまうので、カジノはどうしても公判を避けたかった。そこで和解の交渉が続けられた。裁判所は10月9日、「この一件は和解で解決したので、公判は行われない。」と宣言した為、この一件はまた周知の注目を浴びた。「一体、幾らもらったのか。」と野次馬の好奇心は高まったが、「双方、和解額については沈黙を守る事で了解している。」と弁護士が声明を出したので、正確な額面はわからない。しかしスイス人の相好を崩した顔を見る限り、満足できる額面、すなわち本来のジャックポットの限度額が支払われたに違いない。
         

カジノで、
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ジャックポット?
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