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Widerstand ist zwecklos. (23.02.2011)

仕事で(デッセルドルフの)インマーマン界隈まで夜中に出かける事があった。赤信号で止まっていると、じっと見られている視線を感じたので横を見ると、止まっていたのはパトカー。視線の元は助手席からまるで身を乗り出すようにして、こちらを観察していた(女性)警察官。何も外国人が珍しいわけではなくて、顔が赤くなっていないか、飲酒の証拠を探っていたのだ。酒を最後に飲んだのは10年前のミュンヘン。何も隠す事がないので(美人だったし)手を振ってみると、ニッコリ微笑んで、(少し残念なことに)信号が青に変わると、街中に消えて行った。

ドイツではスピード違反にしても飲酒運転にしても、罰金はお給料に比例する。つまり街中で金のない若いドイツ人を飲酒運転で捕まえるよりも、お給料袋の厚い日本人駐在員の方が効率がいい。この為、夜になるとインマーマン界隈で、日本人が車に乗って立ち去るのを監視している。特に警官に人気なのがアウデイ、メルセデスにBMW。何も知らない日本人が、「見つかるわけがない。」と飲酒の後、車に乗ると後ろから追跡して、車が蛇行していないチェックする。信号が赤になるとわざと横に止まって視線を合わせるのも、警察の技。酒を飲んでると、リアクションをする余裕がなく、表情が凍る。これを見極めているのである。

ビールを酒を呼ばず、液体食料(fluessige Nahrung)と呼ぶドイツでは、酒気帯び運転で違反切符を切られる限界がかなり寛大に設定されていた。著者がドイツに来た頃は、0.8プロミレまでOK。EU統合により、欧州で飛びぬけて寛大なドイツの基準は問題になり、0.5プロミレまで下げられたが、「0.5プロミレ」といってもぱっとしない人が多く、飲酒運転で捕まる人が少なくない。飲酒運転で捕まった一番の有名人は、福音派教会長(女性)。信号無視をした為、呼び止められてアルコール検査をすると、法律で許されている量のほぼ3倍もの1.5プロミレが検出された。0.5~0.6プロミレならまだ「うっかり、、。」と、言い訳もできたかもしれないが、この量はいい訳できる限界をも超えていた。高級車だけでなく運転手まで教会から「支給」されているのに、運転手を利用せず、大酒をかくらって飲酒運転をしたのは思慮のない行為だった。特に彼女はこれまで教会の説教で、政治家、経済人のモラルのなさを非難していただけに、これはまずかった。ただ、しらふの状態ではまだ理性が働いているようで、数日後、逃げ隠れせず記者会見を自ら開いて、役職から辞職する旨発表した。

「ビールの1杯や2杯は大丈夫。」と(何の根拠もなく)確信しているドイツ人は少なくない。目安として限界量を上げるなら、体重が80kgある大人なら、0.5リットルまでのビールはほぼ問題ない。体重が3桁なら、1リットルのビールでも(多分)大丈夫。逆に体格が50kg程度の場合、0.5リットルですでに0.5プロミレを超えてしまうので、ビールの小瓶程度にしておくのが良い。尚、ドイツでも「コーヒーを飲めばアルコールが早く消化される。」などと、医学的な裏づけのない伝説が根強く残っているが、信用しない方がいい。もっと危ないのは、インターネットで購入できるアルコール度検知器。こうした検知器は性能が悪く、何故かいつも決まって低めの値を出す為、「まだ全然大丈夫じゃん!」と飲み続ける事になる。警察に捕まってから、「検知器では大丈夫だった!」と弁護しても、検知器を製造している会社を訴えても、無駄です。警察が使用している検知器は、Eichamtで検査されて文字通りお墨付きの検知器。市販の検知器は、これが欠けており、基準として採用されない。又、同封されている使用説明書にも小さな文字でその旨注意書きがあり、訴えるのは個人の勝手だが、勝てる見込みはなく、勝つ見込みのない法廷闘争を助けてくれる弁護士も見つからないだろう。

中には理屈に長けている人が居て、「警察のアルコール検知テストを拒否すればいいじゃん。」と言われる人もいる。ドイツでは、"Widerstand ist zwecklos."(抵抗は無駄)である。自発的に検査に応じない場合、警察には容疑者を「保護」して保健所に連行、ここで強制的に血液を採取して、血液中のアルコール検査をする執行権が与えられている。そうそう、上述のアルコール度(プロミレ)は、21歳未満、あるいは若葉マークをつけている期間は、厳しい基準が採用されて、アルコールの限度は0.3プロミレである。この危険グループに属する方は運転は慎重に。薬などにアルコールが含まれているケースもあるので、酒を飲んでいなくても、酒気帯び運転で捕まる事がある。「飴やチョコレートに含まれているアルコールで捕まる事がある。」という伝説を聞く事があるが、製造過程でアルコールは蒸発しており、これで飲酒運転になる事はない。ちなみに酒気帯び運転で捕まった場合だが、4点もらえて1~3ヶ月は免停になるので、仕事ができなくなる。飲酒運転の場合は、免許の取り消し&MPU(Medizinisch-Psychologische Untersuchung)、俗に言うIdiotentest(痴呆テスト)を課せられる事もあるので、注意されたし。肝心の罰金額だが、上述の通りお給料に比例するので、高給取りの場合は数万ユーロもの罰金にもなる。

この機会に2月から新しく導入されたガソリンE10について、少し解説しておこう。ドイツでガソリンスタンドに給油に行くと、「このE10って何?」と戸惑われた方も居ると思う。この新しいガソリンは、これまで売られていたSuper(ガソリンに5%のバイオディーゼルを加えたもの)に、倍(合計10%)のバイオディーゼルを加えたもの。バイオディーゼルは政府からの補助金が出ているので、Superよりも少し安くなっている。「いい事じゃん!」と喜ぶのはまだ早い。まずエタノール(バイオディーゼル)は燃焼効率が悪いので、燃費が悪くなり、又、車の馬力も減少する。この為、値段が安くなっていても、燃費が悪いので、得をする事はない。又、車によっては10%ものアルコールに耐える構造になっていない為、車の給油ホースが痛んだり、ガソリン噴射装置が詰まって交換が必要になる事が危惧されている。この為、自分の愛車がこの燃料に対応しているか、あらかじめ調査する事が必要だ。詳細はこちらで確認できるが、ここ数年に製造された比較的新しい車であれば問題ない(筈だ)。

「何故そんな意味の無い新しいガソリンが導入されたの?」と問われる方も居るに違いない。これがなかなか面白いので、語らないではいられない。EUは目に見て減少していく化石エネルギーと、その一方で上昇し続けるCO2に対応するための処置を迫られた。スウエーデンやブラジルなどではもうかなり前からアルコールを混ぜた燃料が導入されており、これに対応した車が販売されていた。ところがドイツ政府は他の問題でもよくやるように、対応が遅れた。何故か?理由は簡単だ。ドイツの主要産業である車業界から、「そんな規制を入れたら、(製造費がかかって)儲けが減る。」と訴えがあったからだ。こうしてドイツの対応が遅れる原因になった。

しかしEUは、ドイツ一国だけからなる組織ではない。欧州議会はドイツ政府の反対を考慮せず、二酸化炭素の排出規制を欧州議会で可決してしまった。目玉の飛び出るような罰金を課せられたくなければ、なんとかしてドイツ車の吐き出す二酸化炭素の量を減らさなければならない。こうしてドイツ政府は早急に対応を迫られたが、これまで何もしてこなかったので、そんなに急に措置が取れるわけがない。そこですでに十分に生産量があったバイオディーゼル導入、すなわちE10の導入に決定したわけだ。ところが車業界はこれに対応してない車を生産していたので、誤ってE10を給油すると、車が故障しかねないというお粗末な結果になった。ブラジルやスウエーデンで、アルコール入りのガソリンに対応したドイツ車が販売されているのに、その本国でドイツ車がE10に対応していないというのは、なんとも情けない、しかしドイツらしい事例であった。



企業心旺盛なドイツ人が考案した移動プロミレサービス。
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