Mietrecht (19.11.2012)

ドイツで一番多い揉め事/裁判闘争は賃貸関係だ。当然、弊社に寄せられる相談でも、賃貸関係がトップ。アパートを出たのに大家が保証金を返してくれなかったり、アパートの暖房が効かなかったり、あるいは備品を壊してしまってその保障代の支払いで揉めたりと、相談の数、種類はさまざま。しかしドイツらしいことに何処までが賃貸人の権利/義務なのか、"Mietrecht"(賃貸法)にてしっかり規定されている。この法律で規定されていない部分は、過去に数々の判例があり、ほとんど疑問の余地を残していない。にもかかわらず、法廷闘争が後を絶たない。これはお互いに法令に関して無知である為に、どちらも自分が正しいと思い込んでいるのが原因だ。我々外国人は言葉の壁があって、この法令について何も知らないケースがほとんど。これでは大家、ひどい場合は詐欺者の好き放題になりかねない。そこで今回は、人気のある賃貸に伴う誤解、裁判例、及び詐欺について紹介してみたい。

まずはアパートが見つからないと話が始まらないので、アパート探しから始めよう。以前は新聞広告を見て、今、アパートに住んでいる住人に電話、アポイントを取って見学に出かけたものだ。困ったことにドイツ人は当てにできないので、アポイントをすっぽかされる事が実に多かった。というのもアパートの見学では、アパートの大家ではなく、アパートの住人/賃貸人とアポイントを取り、今、住んでいるアパートを見せてもらう。住人にしてみれば、面倒な事、極まりない。この為、好んでアポイントをすっぽかす。逆に大家が住人/賃貸人に電話してアポイントを取ってくれ、見学に同行してくれる場合は、すっぽかされる事は少ない。住人と見学のアポイントを取る場合、アパートの見学の前日には、「明日の○○時に伺います。よろすく。」と電話、あるいはメールで確認するのをお忘れなく。

逆に、「大家から連絡があり、アパートの見学のアポイントを要請されれました。これには従わないと駄目なんでしょうか。」というお問い合わせをいただいたこともあった。これは賃貸人の義務なので、回避する事はできない。例外はアポイントもなくアパートにやってきて、「アパートを見せてくれ。」という場合。この場合では、別の日を指定することもできる。

ミュンヘン、ハンブルクなどの大都市ではお手ごろなアパートの数が少なく、見学日には10数名もの競争相手が現れる事も珍しくない。このように需要と供給のバランスが崩れると、詐欺者に絶好の機会を提供する。仕事場はインターネット。「ミュンヘン市内のアパート、50㎡、家賃/400ユーロ/kalt」というアパートの広告が出ていれば、間違いなくなく詐欺だ。ミュンヘンでは家賃は13ユーロ/㎡が平均である。50㎡のアパートなら、650ユーロの家賃が平均で、400ユーロで借りれるわけがない。ところがアパート探しに困っていると、「これは天の恵み!」と錯覚するものだ。こうした宣伝を見て大家にコンタクトを取ると、「このアパートは私がミュンヘンのジーメンスで働いているときに購入しました。今はスペインに帰国しているので空いています。」という返事が届く。「アパートの見学ができるように鍵を送りますので、まずは鍵の保証金として家賃の1カ月分、以下の信託銀行に送金してください。」という文面になっている。言うまでもないが、保証金を送金しても鍵が届くことはない。

アパートの家賃が700ユーロを越える物件は、大家ではなく、不動産業者仲介しているケースが多い。これは不動産屋が空き物件を見つけると大家と交渉、「専売権」を手中にした結果だ。不動産業者はこうして空き物権を市場から駆逐することにより、会社の仲介手数料を確保しようとする。これが原因で仕方なく不動産業者を通して契約すると、不動産業者に家賃の2カ月分+19%の消費税の手数料を支払う事になる。ちなみに手数料の計算の基準になる「家賃」だが、光熱費などの雑費を含まない"Kaltmiete"を使用する。不動産屋は少しでも多く手数料を取りたいので、管理費や駐車場代金まで家賃に含めて、この"Warmmiete"の2カ月分+消費税を請求するケースもある。不動産屋の手数料は、顧客と不動産業者間の問題であり、「手数料は"Kaltmiete"の2カ月分+消費税」と法律で決まっているわけではない。「会社が払うので、それでも構わない。」という人はあまり気にする必要はないが、自分のポケットから払う場合は、「それはおかしいんじゃないですか。」と交渉すべきだ。

東ドイツでは過疎化が進み、アパートが余っている。この為、ライプチッヒなどの町では、不動産屋への手数料は大家が払う。賃貸人が紹介料を払う形では、アパートの借り手が見つからないのだ。西ドイツの都市部ではアパート不足なので、大家が不動産業者に賃貸人探しを一任したのに、その手数料を賃貸人が払う形が一般的。ただし西ドイツでも田舎に行けば、不動産の手数料は1カ月分の家賃+消費税というケースもある。西ドイツでも住人が逃げ出して空家が林立しているゲルゼンキルチェンの町では、べらぼうに家賃が安く、不動産屋要らずだ。もっとも空き家を勝手に占拠して住んでいるルーマニア人と意気投合できないと、ゲットーでの生活はしんどいのであまり勧められるものではない。ドイツで最も人口の多いNRW州の政府が、「手数料は大家が払うべきだ。」と提言、幅広い賛同を受けているが、上述の通りこれは法律で強制できるものではなく、市場が需要と供給の関係で決めるので、成功の見込みは薄い。

運よく大家が直接貸し出している物件を見つけけ、契約までこぎつけたとしよう。ここでいつも相談をいただくのが、「敷金、礼金はありますか。」というもの。ドイツには礼金という考え方はない(一体、何のための礼金なのだろう?)ので、直接、契約する場合、礼金は存在していない。敷金、つまり保証金、ドイツ語で"Kaution"だが、これは通常、"Kaltmiete"の2~3カ月分。保証金の高さについては、法律でびっちりきまっているので、それ以上の保証金を要求するのは違法である。にもかかわらず、中には"Warmmiete"の3カ月分を要求したり、家賃の中にアパートの修繕費を込み込んでいるがめつい大家も居る。幸い、これは違法なので知らないで契約書にサインをしてしまった場合でも、後からお金を取り返すこともできる。もっとも面倒なことには変わりないので、そのような手にひっかからないように最初から注意しておこう。

フランクフルトで家具つきのアパートを借りる方から、賃貸契約書をチェック依頼された事がある。その契約書は、これまでチェックした中で最もひどい契約書であった。大家の都合のいいように随所で内容が改ざんされており、その中でも一番ひどかったのが、「備品が破損した場合は、2000ユーロ/備品、払うべし。」と書かれていた箇所だった。正しくは、「不適切な使用で備品を破損した場合は、同程度の備品の購入費用を払う。」という文句であるべきである。どんな備品、皿でもコップでも、壊れる度に2000ユーロも払わされるのではたまったものではない。正直な所、これまで賃貸契約書のチェックを依頼されて、間違い/改ざんがなかった例がほとんどない。「何も知らない外国人だから。」と外国人相手の契約には特別に用意した契約書を使用して、ドイツ人相手にはちゃんとした契約書を使用しているのか、その点はわかならないが、注意するにこしたことはない。

「アパートを借りる約束をしてデユッセルドルフまで来たんですが、『もう空いていない。』と言われてしまいました。これってありなんですか。」と驚いている日本人も居た。問題はどのような約束をしたかにある。口約束では、そのような取り決めがあった事が証明できないので、本当の話でもあっても、相手に損害賠償を請求するのは難しい。すでに賃貸契約を結んでいた場合は、大家は契約遵守の義務がある。すなわち先に契約をした賃貸人にアパートを明け渡すか、これができない場合は、大家が別の物件を見つけて仲介しなくてはならない。それまでのホテルの滞在費用も大家の負担となる。賃貸契約はまだ結んでおらず、メールでのやりとりだけだった場合は、そのメールの文面次第だ。「物件を見てから契約する事ができます。」という書き方であれば、現地で見学後、契約しない可能性もあるので、大家には見学まで物件を空けておく義務はない。逆に、「賃貸契約は現地で行う。」と書かれている場合は、大家、賃貸人、共に逃げられない。アパートで借りる約束をしておきながら、「ドイツに行くのを辞めました。」と気が変わった場合、ドイツの法令で定められている通り、3カ月分の家賃を払う義務がある。

数々の難関を突破してようやく始まったドイツでの生活。生活する時間が長くなるにつれ、アパートの備品が故障するのは避けられない。問題は、「誰が修繕費を払うの?」という点。基本的にアパートの備品が適切な使用にもかかわらず壊れた場合、その修繕費は大家が払う。典型的な例は、キッチン付きのアパートを借りて、冷蔵庫が壊れた場合。逆に賃貸人が払う修繕費は、"Bagatellschaeden"(ささいな故障/障害)の場合だ。典型的な例は、シャワーヘッド、あるいはっシャワーホースの水漏れ。このような小さな備品は、アパートに付いていたものでも賃貸人が払うので、アパートの見学時、蛇口、シャワーヘッドんまどが水漏れしていないか、ちゃんとチェックしておこう。これをしていないと入居早々、シャワーヘッドを取り替えることになる。

この"Bagatellschaeden"に関しての相談が実に多い。典型的な例は"Rollladen"と呼ばれる雨戸だ。"Bagatellschaeden"は、屋内の備品で常に使用されるものに対して効く条項だ。雨戸はアパートの外にあるので、この条項には当てはまらない。しかし大家はなんとかして賃貸人に費用を転嫁しようとする。もっとも雨戸を操作する紐が切れた場合、この紐は室内にあるので、賃貸人の負担になる。そうではなく、雨戸が動かなくなった場合は、大家が負担することになる(判例 Az: 11 C 4919/03 - ZMR 2004, 120-121)。又、大家は「200ユーロまでの修繕費は"Bagatellschaeden"となり賃貸人が負担する。」と契約書に書いて、責任を賃貸人に転嫁するケースが多い。実際には賃貸人の負担は75ユーロ/回までと上限が決まっており、年間150ユーロまで。これを越える備品の故障は大家が負担しなければならない。

以前、入居しているアパートの浴室でお湯が出なくなった事がある。"Durchlauferhitzer"と呼ばれるお湯沸かし器が壊れた。倹約家で技術系の大家は新しいお湯沸かし器を購入する代わりに、壊れた部品を取替えようとした。お陰で2週間経っても使用不可能で、冬の寒い時期に自衛隊並みの水シャワーで過ごす羽目になった。大家が言うに、「備品が届くまで、あと2週間はかかりそうだ。」というので、堪忍袋の緒が切れた。「冬にお湯が出ないのは重大な"Mietminderung"に相当するので、家賃を20%カットします。」と言うと、翌日には近くのBaumarktでお湯沸かし器を購入、備え付けに来た。そのようなケースで大事なのは、間違っても自分で修理を依頼したり、新しいお湯沸かし器を買わない事。大家には不備を修正する義務と権利がある。この大家の権利を取り上げて、自分/賃貸人で勝手に修理を実行、「大家に請求書を送って払ってもらえ!」という事はできない。この場合、賃貸人は大家の権利を侵害したので、修理費は自腹となる。

その他にも実際には72㎡のアパートを78㎡を表記して高い家賃を要求したり、屋根裏の斜めになっている部分を100%居住面積として計算していたり、バルコニーを"Nutzflaeche"(利用面積)ではなく、居住面積に入れてアパートを大きく見せたりと、大家の想像力には限界がない。これから賃貸契約を結ばれる方、ドイツで賃貸生活を送っている方は、ご注意あれ。会員の方は、こちらの掲示板にて賃貸に関する疑問を無料でご相談いただけます。


サインは内容を本当に把握、承諾してから行うべし。
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