付加価値税 (21.05.2009)

消費税、日本では(まだ)たったの5%。世界に例のない高年齢化、少子化社会を抱える日本で、この税率では到底、破綻している国家財政を救う事はできないので、遅かれ、早かれ、増税は避けられないだろう(この記事は2009年に書かれたものです)。そこで将来の参考になるように、今回はドイツにおける消費税の形態、その問題点を指摘してみよう。

正確を期すならば、ドイツには消費税はない。ドイツにはMehrwertsteuer(Mwstと略)があり、これは付加価値税と言う意味になるので、日本の消費税とは概念が異なる。ところでドイツの消費税率は何%か、ご存知じだろうか。インターネットで検索すると「ドイツの消費税率は17%」だとか、18%だとか、インターネットらしい事にいい加減な説が横行しているが、基本税率は19%だ。基本というからには例外がある。例外税率は7%だ。この例外税率に関しても誤謬が多く、「食料品は7%」と書かれている場合が多いが、そんなに簡単なものではない。例えば離乳食品には19%の税率がかかる。その代わり、ペットの餌は7%。つまりペットの餌が食料品だが、赤ちゃんの離乳食は、食料品ではなく、嗜好品という、奇妙な税率になっている。

これには勿論、その理由がある。ドイツ人はペットが大好き。ドイツにはペット税があるにも関わらず、その数は増加する一方で、逆に赤ちゃんの数は減る一方。この為、「ドイツ人は赤ちゃんよりもペットが好き」と言われるほど。この為、ドイツではペットの餌を生産する業界は、巨大産業。ペットの餌業界は、政治献金を行って政界に太いパイプをもっている。この関係を利用して、業界はペットの餌は7%の消費税が課せられるように要求した。しかし、赤ちゃんの意見を代弁してくれる人は居なかったので、ペットの餌は7%の消費税、離乳食品は19%の基本税率が採用されることになった。ドイツらしい政策の決定過程である。

もうひとつ奇妙な例を挙げて見よう。ドイツ人にてレストランで食事をすると、高くつく。ドイツでは人件費が高いのもその原因になっているが、高い消費税率(これに加えて高い電気代、高い水道代、高い税金)も一役を担っている。日本なら5%の消費税で済むのに、ドイツでは19%の消費税を課せられるので、正味10EURの昼食は日本なら10.50ユーロで済むが、ドイツでは11.90ユーロになってしまう。つまり1週間で9.5ユーロ、一月で190ユーロも消費税を昼食だけで支払うことになる。これを少しでも節約する方法は何かないものか?そんな方法ない?実はあります。食事を包んでもらって「お持ち帰り」にすればいいのです。

ドイツの法律では、レストランで食事をすると19%の基本税率が採用されるが、「お持ち帰り」にすると、レストランでの食事とはみなされず、7%の消費税が採用される。この為、ドイツの街角で多く見られるお持ち帰り専門のピザや屋は、これを利用して値段が格安になっており、学生などに大人気。この税率はお持ち帰り専門のピザ屋だけに採用されるものではなく、マクドナルドで「お持ち帰り」を選択しても、日本料理屋で「特上寿司詰め」を注文してお持ち帰りした場合でも、7%の税率が採用される。しか~し、(マクドナルドを含み)レストランなどは例えお持ち帰りでも、この低い税率を採用せず、19%の税率を請求している。得をするのはレストラン経営者だ。お持ち帰り客からは19%の消費税を取っておいて、税金は7%しか納めないので、丸々12%儲けになる。そこであるドイツのテレビ局がマクドナルドに「特派員」を派遣して、消費税の還元を交渉させた。最初はあっけに取られていた店員も、その論拠に負けて、最後は消費税を返還していた。正しい論拠を展開されると、いかに珍しいものでも、これを認めるのはドイツ人らしい。
          
尚、こうした「法律の抜け穴」に気付いたドイツ政府は、消費税率を「改正」する事にした。その際、さまざまな利益団体が政治家に陳情、ますます奇怪な消費税率が採用されることになった。例えばりんごを買うと、消費税は7%だが、りんごジュースを買うと消費税は19%になる。又、ドイツ人の大好きなPommes(フライドポテト)。これを使い捨てのプラスチックか紙の容器に入れて売ると7%の消費税で済むが、環境にやさしく繰り返し使用できる「皿」に載せて出すと、レストラン扱いになり、19%の消費税が採用される。こうした無意味な消費税率の改正の結果、これまでは7%で済んでいた学校の給食も、繰り返し使用できる皿で提供される為、19%の消費税が採用されることになり、値段が一気に12%もアップ。怒った両親は給食を拒否、子供が家を出る際に、乾いたパンにチーズをはさんで学校に持参させるようになった。結。ドイツらしい政策の決定過程である。

編集後記
倹約家のドイツ人は、「3ユーロなんでとんでもない!」と子供の給食費に300円払うことを拒否した。その結果、東ドイツでは給食を最も安く提供してる会社、sodexoが市場を独占した。なんと給食費2.70セントである。食材は(安い)冷凍食品を使用。これを大量に仕入れると、それぞれの州に「中央補給所」を設置して、ここで調理してから各学校に配送する方法でこの低価格を可能にした。費用の内訳は、輸送費、人件費、会社の儲けが2.20セントを占め、食費は50セントという値段である。そんな値段でまともな給食が提供できる筈がないが、両親はこの値段に満足した。

2012年10月始め、東ドイツの学校で生徒がノロウイルスに大量感染した。なんと感染者の数は確認されただけでも8365名に上り、ドイツ史上、最高/最悪の大量感染となった。感染した生徒は例外なくsodexoの給食を食べていたため、感染源は最初からこの会社の給食にあると推測されたが、一体、何処でどのように感染したのか。保険所は言うに及ばず、著名なロバートコッホ研究所まで感染源の解明に取り掛かった。サンプルから細菌を培養する必要があり、解明には1週間ほどかかったが、sodexoが仕入れていた中国製の冷凍イチゴからウイルスが発見されて、ようやく感染源が解明した。

「これでドイツ人も教訓を学んだ。」と思ったら、大間違い。ドイツ人は未だに「子供の給食に3ユーロなんでとんでもない!」と今でもsodexoの給食を食べさせている。この辺、海外でも「倹約家」として名高いドイツ人の気質がよく現れている。


消費税19%
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消費税7%
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