Wurst! (28.12.2008)


ドイツに興味のない人に「ドイツと言えば?」と聞いて連想する物は、車、ヒトラー、ソーセージ(順不同)の3つ。車とヒトラーはいずれ機会があれば別の場所で取り上げるとして、今回はドイツを代表する食べ物、ソーセージについて取り上げてみたいと思う。

ソーセージは英語(語源は古典フランス語のsaussiche)の表現だが、ご存知の通りドイツ語ではWurst、何故か女性名詞、"die Wurst"。日本は侍の時代が長く続いたので、「腹」に関した慣用句が多い。「腹を決める。」、「腹のうちが黒い。」、「背に腹は変えられない。」などなど、ドイツ人には理解できない慣用句がたくさんある。同じように、ドイツ語にはWurstを使った慣用句が非常に多い。例えば"Es geht um die Wurst."と言われても、日本人は意味がわからず「へっ?ソーセージですか?」と聞き返してしまうことだろう。しかしこれは、「一世一代の大事だ!」という真面目な意味になる。それほど Wurstは大事なものかと思いきや、"Das ist mir vollkommen Wurst."という表現があり、これは「そんな事はまったくどうでもいい。」という意味になるから不思議。このような慣用句を理解するには、その文化の中で育つ必要がある。これなくして成人してから接する異文化の表現というのは、その国の文化を端的に表していてとても面白い。

日本でソーセージの定番と言えば、日本ハムのシャウエッセン(荒挽き)だろう。ただ、名前の意味がよくわからない。エッセン(名詞なら食事という意味。)というからには、ドイツ語なのだろうが、シャウ(Schau)は展覧という意味なので、Schauessenでは意味を成さない。まあ、おいしいので名前はどうでもいい。ドイツに来る前、「日本(ハム)のソーセージがあんなに旨いのだから、本場、ドイツのソーセージはもっと旨いに違いない。」と密かに期待していたが、その期待は見事に裏切られた。てっきりドイツにはシャウエッセンのような皮がパリパリで中身はジューシーなソーセージがあるのかと勝手に思い込んでいたがこれは大きな誤りで、ドイツのソーセージは、日本のソーセージ(シャウエッセン)とは全く異なるものであった。

ドイツで最も一般的なソーセージはBratwurstと呼ばれるもの。一般には焼きソーセージと訳されるが、Bratはbraten(焼く)ではなく、Braet(ひき肉)からきている。これはドイツ人でも間違って理解している人がほとんど。ドイツ人でこの有様だから、日本人が「焼きソーセージ」と訳してもご愛嬌だろう。それに焼きソーセージの方が「ひき肉ソーセージ」よりも、語源は間違っていても、ぴったり合っている。この焼きソーセージは、ドイツ中、何処へ行っても街中のスタンドで売られており、パンにはさんでいただく。ちなみにこの焼きソーセージ、Tueringen産のソーセージを使うのが「本家」とされており、正式名称はTueringer Bratwurst(テューリンゲンの焼きソーセージ)と言う。この名前を冠するには合挽きを使用しており、最低でも全長15cm必要との事。肝心の味は、外出先(クリスマスマーケットなど)で食べるとおいしいが、自宅でフライパンで焼いても何故かおいしくない。ちなみに、ドイツ人はこのソーセージにケチャップをかけて食べるのが大好き。ソーセージを一口サイズに切って、ケチャップをかけたものをCurrywurst(カレー風味のソーセージ)と言い、どこでも売られているが、カレーの味はしない。ケチャップにカレー粉を混ぜているので、この名前が付いただけ。欧州のカレー粉は風味がないので、ケチャップの味しかしない。ケチャップ好きな人には受けるかもしれないが、そうでない人は敢えて試す必要はない。
          
日本で一番知られているのは、日本人観光客の多い、ミュンヘンのWeiss-wurst(白いソーセージ)だろう。地元の人は皮(腸)を取って、中身だけ食べるのが正しいと主張、ご丁寧に皮の取り方を教えてくれる(そしてこれに難しているのを見て笑う。)が、面倒なら皮ごと食べても一向に差し支えない。が、バイエルン特産の蜂蜜を入れたマスタードは必需品。話は横道に逸れてしまうが、ドイツで売られているマスタードは、製造の段階で大量の酢を加えるので酸っぱいだけ、辛くない。不味い。是非、ドイツにソーセージを食べに来られる方(?)は、日本の粒マスタードを持参されることをお勧めします。(探せばあるもの。スーパーでフランス産マスタードと称して売られていました。)次に日本で有名なのはBlutwurst(血のソーセージ)だろう。豚の血に脂肪を混ぜて固めたもの。バリエーションとしてこれに肉(内臓、頭、舌)などを入れた肉入りもあるが、どっちにしてもあまりおいしくないので、お土産には向いていない。(どのみち肉類の持込は禁止されています。)似たようなものにLeberwurst(肝臓のソーセージ)がある。通常は、燻製にしていただく。これも日本人の口にはあまり合わない。又、むくれている人をドイツ語で"beleidigte Leberwurst"(侮辱された肝臓のソーセージ)と言う。意味の起源は不明。ご存知の方、教えてください。

勘違いしてしまいそうな名前のソーセージとしてBierwurst(ビールのソーセージ)がある。これは豚、牛、心臓を用いて作るバイエルン州特産のソーセージ。他のソーセージとの大きな違いは、すでに茹で上がった状態で売られているので、スライスして食べるだけ。ビールの「おつまみ」に合う(らしい)ので、この名前が付いた。ビールが製造過程で使われているわけではない。ドイツのソーセージで日本人の口に一番合うのは、Nuernberger Bratwurst(ニュルンベルクの焼きソーセージ)だろう。これは小指大の大きさのもので、荒挽き豚肉を使用しているので口に入れて噛むと、肉汁が口の中ではじけて美味。ただ、小さいので幾ら食べても足りない。結局いつも食べ過ぎて、脂で気持ち悪くなる。又、Krakauer(クラカウ産のソーセージ)もおいしい。名前の通り、今のポーランド(昔のシュレージエン地方)で生まれたソーセージだ。豚肉、牛肉を混ぜて作るのは他のソーセージと変わりないが、燻製しているのが特徴で、噛むと皮がパリ!と破けるのが快感。似たような感触を楽しめるのがWiener Wurst。名前の通り、ウイーン産のソーセージ。ドイツ人は愛国心を込めてFrankfurter(フランクフルト産)と呼ぶ。その訳は、フランクフルトに住んでいたドイツ人の肉屋がウイーンに移住して、そこで製造(発明)したWurstなので起源はドイツ(人)にあるという理屈だ。このソーセージはお湯に入れて暖かくするだけ。(皮が裂けないように暖めるのがコツ。)男の一人住まいには強い見方。ちなみにWiener Wurstのドイツ版はBockwurstと呼ばれており、製造方法はWienerと同じでただ太いだけ。発明したのはベルリンの一膳飯屋。ベルリン産のBockbier(ボックビール)のおつまみとして食されたので、この名前が付いた。

ここまで書いたので、最後に日本でほぼ100%勘違いされている名前の起源ついて。ハンバーグ、英語でHamburgerと言うので、ドイツで生まれたという説が日本では一般的。しかし、このHamburger、ドイツ語ではBulette、あるいはFrikadelleと呼ばれるので、ドイツで生まれた物でない。前者はフランス語のboulette、後者はイタリア語のFritatellaから派生しており、このドイツを代表するように思われた食べ物は、実は外国産のものである。「じゃ、どうしてHamburgerという名前なの?」と言う事になるが、アメリカのニューヨークにHamburgという街がある。ここで豚肉不足に困った肉屋が仕方なく(あるいは試しに)牛肉を代用品に使った(1885年)のがハンバーガーの名前の起源とされている。逆にいかにもアメリカ的な食べ物、Hot Dogは、ドイツ人移民がアメリカで売り始めたBratwurstだ。


ドイツ人の大好きなカレーソーセージ。
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COMMENT 2

RERA  2016, 03. 25 [Fri] 01:28

No title

ハンバーグのルーツは、今のモンゴルあたりに住んでいたタタル族で食べられていた保存食で、ドイツのハンブルグでハンブルグステーキとなって、それがハンバーグに転訛したというのが定説ですね。

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ドイツの達人  2016, 04. 17 [Sun] 22:04

Re: No title

こんにちわ。

残念ながら誤謬です。
タタル族の食べ物が、よりによってドイツ、それも何故かハンブルクにやってくるなんて、出来すぎた話だと思いませんか。

名前が似ているので、あとから作った「定説」です。

ドイツには
「ハンブルクステーキ」
なる物は存在しておりません。

記事で書いたとおり、ドイツではFrikadelleといいます。
ドイツのハンブルクとは関係ありませ~ん。

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