冬タイヤ (31.10.2008)

今回は、毎年この時期になると決まって話題になるテーマ、Winterreifen(直訳すると冬タイヤ、日本ではスノータイヤと呼ばれている。)について。言うまでもなく、ドイツの冬は寒いし、雪も降る。温暖化の影響で街中に雪が積もることは滅多になくなったが、高速道路などは人気のない山を越えていくので、標高が高く、雪が降りやすい。そんな道路を通常のタイヤ(Sommerreifen/夏タイヤ)で走行すると、間違いなく衝突事故を起こす。それも数台の車を巻き込んで。そこでドイツ政府は思い腰をやっとあげて、雪が振っている状況での冬タイヤの装着を義務付ける事にした。ところが、ドイツらしいことにあちこちの利害団体から政治家に陳情(賄賂)があり、わかりにくい法律ができあがってしまった。この為、ドイツ人でさえも間違ってこの法律を解釈している始末だ。そんな具合だから、我々外国人が、ドイツ人同僚などからこの法律について間違った解釈を受け、これを信じてしまっているケースがとても多い。そこで、ここは誤解のないように事実関係をはっきりとさせてみたい。

夏タイヤの「神話」には2つある。最初の誤解は、「気温が8度を割ると夏タイヤのゴムが硬くなり、ブレーキをした際、制動距離が長くなる。」というものだ。雨が降っていたり、あるいは雪が積もっておれば、夏タイヤでは冬タイヤに比べて制動距離が長くなる。しかし、道路が乾いている限り、夏タイヤの方が制動距離は短くて済む。冬タイヤが効果を発揮するのは、雪が降っているか、道路が濡れている時だけ。日本語のスノータイヤという言葉は、ドイツ語の冬タイヤという言葉より、その効果の程を的確に表現している。この神話は冬タイヤを売りたいタイヤ業界が考え出して、市民に幅広く受け入れられた神話のひとつである。

二番目の誤解は、「冬(11月から)になると、冬タイヤの装着は義務である。」というもの。ドイツの交通法規(Strassenverkehrs-ordnung、略してStVO)の2部、3章aには、"Bei Kraftfahrzeugen ist die Ausruestung an die Wetterverhaeltnisse anzupassen."(自動車には気候に適した装備を行うべし。)としか書かれていない。わかりやすく説明すれば、「雪が降っていたり、積もっていれば、冬タイヤの装着は義務。」という事になるが、多くのドイツ人はそう解釈しないで、寛容の精神で「冬季の冬タイヤの装着は義務。」とやってしまった。もっともこれには他の原因もある。

2006年にこの法律が施行されると、車のタイヤメーカーと車の整備工場は笑いが止まらなかった。これで冬タイヤの爆発的な売り上げが期待できる。在庫切れで儲けのチャンスを逃さないようにあらかじめ大量のタイヤを注文(生産)、客が怒涛のように押し寄せてくるのを待っていた。ところが温暖化の影響で雪が降らず、客足は一向に伸びなかった。多くのドイツ人は高い冬タイヤの費用(タイヤだけでなく、冬タイヤ用のホイールも必要になる。)を節約、少々雪が降っても夏タイヤで走行、「俺はシューマッハ並みの腕があるから、そんな物は要らない。」と言い出す始末。これでは大儲けどころか、在庫がはけず大赤字になる。これを避ける為に、タイヤメーカーと修理工場は一眼になって「冬タイヤの装着が義務化されました。これに違反すると罰金です。」とテレビ、ラジオ、新聞で大宣伝。「テレビで言っているくらいだから、これは本当に違いない。」と多くのドイツ人は思い込んで、冬タイヤを購入、タイヤメーカーと修理工場は在庫を失くすことに成功した。その結果、ドイツ人の頭の中には、「冬には冬タイヤの装着は義務。」と刻み込まれてしまったのである。

実際面から言うと、デッセルドルフに住んでいると通勤に車を使わない限り、冬タイヤは要らない。年2回(いつも決まって冬も終わりの2月~3月になって。)雪が降って、2~3時間道路に雪が積もることもあるが、雪が降るとすぐに市の塩撒き車が登場、塩をまくので雪はすぐに解けてしまう。車で出かける際に雪が降っていれば、その日は車は車庫に置いて、電車かタクシーで出かけるだけで、高い冬タイヤの費用が節約できる。車で通勤されたり、あるいはデッセルドルフ近郊WuppertalやSolingenに住んでいると、冬タイヤは避けて通れない。ただ、一言に冬タイヤと言っても大きな違いがあるので、幾つか注意すべき点を挙げてみます。

まず、冬タイヤを買うことに決心したら、安い中国、韓国製のタイヤは避けよう。日本では「安物買いの銭失い。」という表現がある。ドイツでも"Wer billig kauft, kauft zwei Mal."(安く買うと、買い直す。)という通り、安いタイヤは、ドイツ製のタイヤ、コンチネンタル、日本の資本が入っているダンロップ、おフランスのミヒェリンに比べて、制動距離が長過ぎてあまり意味がない。また「本物の」冬タイヤはM+Sと表記されている。これは泥+雪に対して有効という意味。偽物の冬タイヤにはこのM+Sのシンボルが欠けている。そんな冬タイヤはデイスカウントスーパーなどで大特価で買う事ができるが、役に立たず、お金だけ失うだけ。ただ有名メーカー製のタイヤでも、買う前にタイヤの製造年月日を確認しよう。冬タイヤの寿命は(ゴムが硬くなるので)4~5年。(勿論、走行距離次第です。)10~11月に冬タイヤを購入、あるいは注文すると間違いなく去年の在庫だ。すると、それだけで寿命が1年短くなるが、これは仕方ない。でも2年前の古タイヤを掴まされないように注意しよう。ちなみに12月以降にタイヤを買うと、在庫が売り切れてその年に製造されたタイヤを買うことができるようだ。

最後に、「どこで買うか。」ということになりますが、快適にタイヤ交換を済ませたい人は、お持ちの車の正規代理店に行くのが一番。いつ行っても在庫がある(筈)。又、タイヤへの交換には冬タイヤ専用のホイールが必要になるが、その際ホイールの大きさ、幅の他、」ET(Einpresstiefe)にも注意する必要がある。いい加減な修理工場だとこれを無視して、あるいは間違えてしまうこともある。正規代理店なら、そんなこともなくて安心。だが、少々高い。少しでもお金を節約したいなら、インターネットでタイヤを注文して、近くの修理工場に届けてもらう方法。どちらの方法が自分にあっているか、それは懐具合とドイツ語能力次第。

そうそう、冬タイヤと夏タイヤだけでなく、1年中使用できるAllwetterreifenというタイヤもあります。これは冬タイヤと夏タイヤの中間。つまり冬(夏)には冬(夏)タイヤほど効果はないが、夏(冬)タイヤよりはマシという代物。特にお金を節約したい人には、このタイヤを購入する人が多いが、肝心な場面であまり役に立たない(制動距離が長くなる)ので買わないほうがいい。又、雪の中を(冬タイヤで)走行したら、車は塩漬けの状態。そのままにしておくと、錆びます。翌日は車の洗車に行ってUnterbodenwaesche(車の裏洗浄)のメニューを追加しよう。

編集後記
冬タイヤに関する法律は2010年に改正され、積雪、降雪、凍結時は冬タイヤが義務化されました。これについては、あらためて別の記事で取り上げます。


超ブル~。
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