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訪問販売 (28.01.2008)

タイに旅行すると、ピックアップの荷台に果物を摘んで、路上で巡回販売している光景を見かける。日本では滅多に見かけない光景だが、ドイツでは見かける事がある。自衛隊の曹長が大喜びしそうな大声で、”Kartoffeln! Kartoffeln!"とジャガイモを車の荷台に積んで巡回販売している。何もジャガイモばかりじゃなくって、一度に大量に採れてしまうイチゴの巡回販売もある。スーパーに降ろすと大量に引き取ってくれるのだが、値段が安いので儲けがない。車の荷台にジャガイモを積んで売って歩くのである。騒音規制のないタイでは滅茶苦茶うるさいメガホンだが、ドイツでこれをやると違法。そこで鐘を鳴らしながらメガホン等使用しないで叫んでいる。かなり立派な大声だ。ドイツには他にも掃除機、雑誌の定期講読、宗教の押し売り、中にはインターネットの契約などの訪問販売があるが、その多くは詐欺だ。

雑誌の定期購読の押し売り屋は、"Abo.Dreher"の異名で呼ばれている。"Abo.は"Abonnement"定期購読(契約)を指し、"Dreher"は、「(欲しくもない契約を)押し付ける人。」という意味である。インターネットのこの時代、どこの出版社も生存を賭けて販売部数を維持しようとしている。その出版社にとって、一番欲しいのが定期購読契約である。だから定期購読の契約を取ると、出版社からコミッションが出る。このコミッションを目当てに失業者など集めて、訪問販売先で相手に「要らない。」と言わせない集中トレーニングを受けさせる。トレーニングを受けた"Dreher"はバンなどに押し込まれて、町から町へと移動、バンから降りると、片っ端から「ピンポ~ン」をして回る。一番効果的な販売方法は、哀れみを利用する方法だ。ありもしない家族の不幸をまさに役者のように語って、客の同情を勝ち取る。そうなったら誰でも、「出来ることなら、助けてあげたい。」と思う。そこで、必ずしも必要でなはいが、全く要らないわけでもない雑誌の定期講読に「人助けの為!」と思ってサインをしてしまう。これにより、「今日はいい事をした。」と清々しい気分になりたい、人間の弱点を利用している。中には30分、1時間と立ち話を聞き続けて疲労困憊してしまい、帰って欲しい一心でサインするケースも少なくない。

最近は、インターネットの訪問販売が問題になっている。10年前までは、DSLを使い放題料金で申し込むと、電話回線料、ISDN料金、DSL回線料金、そしてDSL使用料金で毎月の請求書がほぼ100ユーロもした。ところが、電話回線市場の自由化で、(誇張した言い方をすれば)誰でも回線をテレコムから借りて、インターネット(DSL)を提供することが可能になった。結果としてテレビ局、携帯電話業者、出版社、コーヒー屋など、これまでインターネットなどとは全く関係のなかった業者までも、インターネット事業に乗り出した。それほどまでに、DSLは金のなる木だった。ところが競争が激化するに従って、値段が落ちてきた。2012年の時点では、たったの25~30ユーロ/月。流石にここまで値段が落ちてくると儲けも薄い。そこで、まだDSL商売を諦めていない業者は薄利多売で、会社を運営しようと必死だ。契約を取ってくると報奨金が出るので、この金を目当てに怪しげな会社が誕生、失業者を"Dreher"に仕立て上げて、販売訪問に送り込んでいる。

その方法はいたって簡単で、効果的。「この地区ではテレコムがサービスを中止するので、テレコムの依頼を受けて契約の書き換え中です。」と御伽噺を聞かせて、契約書にサインを取る。ひどいケースでは、家宅訪問する手間を省き、電話帳を見て契約書を書きまくった販売人も居た。その中にすでに10年も前に死んだ人がおり、契約書にサインを偽造していたのがばれた。このケースではイプロバイダーは、この"Dreher"の取った契約を自主的にキャンセルしたが、そんなに運のいい(?)ケースは稀。通常は、「あなたのサインが契約書にあります。」とだけ言って、プロバイダーは一向に話を聞かない。こういう詐欺に引っかからない方法はひとつだけ。呼び鈴が鳴っても、名前と用件を言わない相手にはドアを開けない事。「ドイツ語はわかりません!」という人は、最初からドアを開けてはならない。
 
中には救急隊員の衣装を着て、募金に見せかけてお金を徴収している詐欺団もいる。「救急活動に必要な資金集め。」というのだが、救急隊員は市の職員なので、その活動資金は税金で払っている。募金をしないと緊急時に助けに来てくれない事を心配して、募金を払うケースがあるが、これは詐欺団なので募金をしようがしまいが、助けに来てくれることはない。訪問販売を取り上げたついでに紹介しておくと、日本人の住んでいるアパートを狙って、宗教の勧誘に来る日本人も居る。逆恨みをされると怖いので、慇懃にお断りしたが、一体、何の宗教だったのだろう。

編集後記
先日は、「あなたの電力会社です。」という電話がかかってきた。「じゃ、私は日本の天皇です。」と笑いながら言い返したが、なんでも電気の3年契約を売りたいらしい。「電話だけじゃ信用できないから、書面で送ってよ。」と言うと、「電話だけの特別料金です。」という。そんな甘言に騙されるほど経験不足じゃない。「身元も証明できない人と、電話で契約する気はない。」と言うと案外、あっさり諦めた。これはコールセンターと呼ばれる一種の"Dreher"であり、電力会社とは一切関係ない。市民のインターネットや電気の契約先を調べて、片っ端から電話して、契約を取るのが仕事だ。契約を取ると、電力会社、あるいはインターネットのプロバイダーから報奨金が出るので、朝から晩まで電話をかけまくっている。「電力会社です。」という言葉に騙されないように。大体、消費者に電話をして契約を取る商売は、法律違反である。そんな連中と話をして、ろくな事にはならない。0080で始まる怪しげな電話がかかってきたら、要注意。


名簿に名前が載ると、電話に出るまで、朝から晩まで電話をかけてきます。
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