Blitzer

"Blitzer"というドイツ語がある。何のことだか、辞書を利用しないで考えてみよう。元になっているドイツ語は"Blitz"だ。「電撃作戦」を"Blitzkrieg"と言うから、"Blitz"は雷、ゴロゴロ言う方ではなくて、光る方、英語でいう"Lightning"の事だ。なれば、"-er"が付いて、"Blitzer"は「光る人。」あるいは「光る物。」という意味になる。一体、何だろう?カメラのフラッシュ?残念。フラッシュは"Blitz"で済んでしまう。実はこれ、スピード違反を取り締まるカメラの事を指している。

ドイツの地方自治体は、収入がなくて倒産寸前だ。オーバーハオゼンなどは、借金で首が回らず、市営のプール、図書館は閉鎖され、修理費がないので道路には大穴が開いており、まるでソビエト軍が侵攻してきたような有様だ。テナントが居ない空のビルが林立しているのも、戦地のイメージを強める。こうした自治体の最終兵器が、スピード違反の取り締まりだ。ドイツの道路脇に立っているスピード違反のカメラの数は、日本の比ではない。スピード違反だけでなく、信号無視を取り締まるカメラも設置されており、ドイツで車を運転すると、遅かれ、早やかれ、白黒の記念写真を受け取ることになる。

言っちゃ悪いが、ドイツ人はケチ。あのタイだって、ドイツ人が多く住む北パタヤは値段が安い。というのも、ドイツ人がちゃんと値段のコントロールをしているからだ。日本の観光客のように、言われた値段を払うようなことはしない。交渉して値段が下がらなければ、「仕方ないなあ。」と、言い値を払うのが日本流。交渉して値段が下がらないと、"Du kannst mich mal!"と怒って他を当たるのがドイツ流。こうしたドイツ人の努力は涙ぐましい。こうしたドイツ人の数十年の努力で値段が抑えられているのに、日本人が来ると一気に値段が上昇する。だから、ドイツ人の日本人に対する評価は高くない。

そのドイツ人がスピード違反の罰金を節約しようとするのは、ごく当たり前のこと。車の用品店で"Blitzer"を警告する探知機が売られている。ただしそれでは地方自治体は商売あがったり。そこでドイツでは"Blitzer"を警告するナビゲーション、あるいはレーザー探知機を車に設置するのが禁止されている。(販売は違反ではない。車に設置するのが禁止されているだけ。)探知機が警察に見つかると、探知機は没収、罰金が課されて、4点もの点数が付いてしまう。これは結構痛い。あと一回捕まると、免停になるからだ。しかしそれで諦めるドイツ人ではない。

最近はスマートフォンが流行して、スマートフォンをナビゲーションの代わりに使用する事ができる。これに目を付けたドイツ人が、"Blitzer"に近づくと警告音を出す"Apps"を開発した。どうやってお金を儲けているのかよくわからないので、少し注意が必要だが、この"Apps"は無料なので、とても人気がある。興味がある方は、こちらで"Apps"をダウンロードするか、近くに設置されている"Blitzer"を探す事もできる。

賢い読者の皆さんは、「ちょっと待って。それって違法じゃないの?」と指摘されることだろう。ご指摘の通りである。携帯電話にこの"Apps"を利用して車を運転してることがばれると、上述の罰則が適用される。ただし、携帯電話の「中身」は家の中と同様に、「個人の領域」なので、警察が土足で踏み込むことができない。家宅捜査をするには、裁判所が認可して捜索認可証が必要なように、携帯電話の中をこの"Apps"を探して捜査するには、同様の捜索認可証が必要だ。つまり警察はこの"Apps"を使用している疑いがあっても、捜査をする事ができない。勿論、警察は、「あなたの携帯電話を見せてください。」とこの法律をかいくぐろうとするが、携帯を警察に見せる義務はないので、「嫌。」と言えば、警察はそれ以上、何もできない。勿論、警察は、「何も隠すことがないなら、見せてもいいでしょう。」などと脅してくるが、これはブラッフなので、「ノーコメント」と言うだけでいい。

尚、スピード違反の写真が届いてしまっても、まだ終わりではない。スピード計測の方法に誤りがあったとして、"Akteneinsicht"を求めることができる。弁護士の話によると、スピード違反計測の半数は誤りがあるという。計測方法に誤りがあると、計測は無効になり無罪放免となるので、仕事で免許証が必要な方は、弁護士保険は必修だ。尚、運よく双子の方は、「兄貴が運転していた。」と言えば、無罪になる確率が高い。ドイツでは車の所有者ではなく、運転していた人が、罰金を払う必要がある。そして誰が運転していたか、これを突き止めるのは警察の任務である。「兄貴が運転していた。」という場合、警察は写真と本人を見比べて、どちらが運転していたか判断する必要がある。しかし双子の場合、これは不可能で、「どちらかが運転していた。」という事になる。「どちらか。」では誰が運転していたか判明していないので、警察は罰金を課すことができないのである。流石、ドイツ。


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