大安売り (17.08.2017)

今回のテーマは車。まずは違法の排ガス操作で有名になったフォルクスヴァーゲン社(以下VWと略)から始めるよう。VWとその傘下の特定の車種に限られているが、「オイルが減る。」という現象に悩まされている。「走れば減るのは当たり前。」とVWは言うが、その減り方が尋常ではない。「減れば足せばいいじゃない。」と思うかもしれないが、エンジン内でガソリン、あるいはデイーゼルと一緒に潤滑油が燃焼するのは、エンジンによくない。そのようなエンジンは何処かに欠陥がある。エンジンオイルが減るエンジンを分解してみると、オイルが焼きついてエンジン ピストンが変色している。この不具合は購入後2~3年後に現れるのでVWは、「保障外」とリコール修理を拒否している。そこで正規代理店に修理に出すと、4000~5000ユーロもの修理費を請求される。

この不具合の原因はすでにわかっている。エンジンピストンにはオイルが燃焼室に入り込まないように、リングが装着されている。このリングが余分なオイルをぬぐう仕組みになっており、リングには、拭ったオイルがオイルパンに戻るように穴が空いている。この穴が狭くて、オイル詰まりする。こうしてエンジンオイルはピストンが上がる度に燃焼室に運ばれて燃焼する。VWはこの欠陥部品をすでに以前のモデルに使用、問題が発覚して別のリングに替えたのに、「在庫が余って仕方がない。」ためか、再度、この欠陥リングにの採用に踏み切った。穴が詰まって不具合が発生するのが保障期間後なので、修理で大儲けできるという副作用も期待できる。
           
もっとも何処でもそんなにうまくいくわけではない。2014年に米国でこの件に関してVWに対する集団訴訟があり、同社は無償で修理を提供した。すなわちVW社は自社の車に欠陥があるのを知っているのに、ドイツでは集団訴訟が認められていないので、米国と同様の処置を拒否、「欠陥ではありません。」と言い張ることで済ましている。流石、排ガス規制装置を操作して、「知りませんでした。」と真顔で言うだけの会社だけのことはある。この現状を見てエンジン部品の専門店は独自のピストンリングを開発、「オイルの現象でお悩みですか。3500ユーロで修理を引き受けます。」と、VWよりもはるかに安い値段で修理を提供している。

次はVW社の排ガス規制操作に関するテーマだ。去年、VW社のマネージャーが何も考えず、家族と一緒に米国で休暇を過ごした。帰国すべく空港に行くと、家族の間の前で手錠をかけられてしまった。そう、彼はVW社の環境部門のマネージャーだったのだ。逮捕以来、「私は無実です。」と主張してきたが、検察は同被告に対して陰謀罪で169年の懲役刑で脅した。会社のために監獄で死ぬ気のないマネージャーは「有罪です。」と自白、懲役刑は7年までに減刑される見込みだ。その他、複数のマネージャーが指名手配されており、間違っても米国、あるいはその友好国に入国してしまうと、身柄を拘束されて米国に渡される危険がある。何しろ米国の検察はインターポールに指名手配リストを送り、世界中で指名手配しているからだ。該当のマネージャーは、逮捕されたくなければ、一生、ドイツで暮らすことになりそうだ。自業自得だろう。

一方、ドイツ国内でVW、アウデイ、シュコダ、セアット等、違法ソフトを搭載してている車を買った消費者は、大企業を相手に車の返還と購入金額の返却を求めて個々に訴えるしか、方法がない。そのような訴えがあると、VWは非難を一切認めず徹底抗戦する。夢のような予算と、まるでサッカーチームのような弁護士団を抱えているVWを相手に、一般消費者は勝ち目がほとんどない。ある地裁で裁判官がVWに、車の引き取りと購入価格の返却を命じた。これまでのケースではVWは上告して徹底抗戦する戦略を取っていたが、何故か今回は上告を諦めて、判決を受け入れた。以来、弁護士事務所では一攫千金を夢見て、「あなたの車の購入金額を取り戻します。」と無償法廷闘争を提供し始めた。勿論、弁護士が無償で働くわけもなく、勝訴の際には返却される金額から「謝礼」をいただく契約になっているが、裁判に負けても費用はかからない。中古市場でデイーゼル車の価格が下がる一方なので、「だったら報酬を払っても、車を払い戻ししてもらった方がいい。」と弁護士に裁判を申し込む消費者が増ええている。ここでの争点は、「車を売ったデイーラーまで、責任を要求できるか。」という点になっている。ある裁判所は払い戻しを命令、ある裁判所は、「デイーラーにそこまで責任はない。」という判決を下している。

最後に輸入車に関するトラブルを紹介しておこう。北米市場で全損した高級車を買い、リトアニアに輸出している犯罪組織がある。リトアニアに輸送船が着くと、車は秘密の自動車工場に運ばれる。犯罪組織はここで車をチェック、修理に必要な部品のリストを作成、部下に部品の調達を命じる。部下はバンに乗って、ドイツまで部品調達の旅に出る。なんでリトアニアで買わないで、わざわざドイツまで来るの?なんて不思議に思う方に説明しておくと、高級車は部品が高い。そんな部品を使って修理すると赤字だ。そこでドイツまで部品盗難の度に出る。ドイツで必要な部品を調達すると、リトアニアで事故車を修理する。修理と言っても、見えるところだけ。曲がった車体などは修理しない。修理が完了すると、ドイツに「USA仕様車」として輸出する。ドイツの車検場は他の国と違い、全損した車が本当に安全に走行できるかチェックしないので、錆びていなければ新しい車の車検証をもらえる。あとは市場価格よりも10~20%安く提供するだけ。すると安い値段に惹かれた鴨が、鍋を背負ってやってくる。リトアニアから輸入された車の大部分はこのような全損車なので、次第にいい加減に修理した箇所がまた壊れて、高級車は高級廃車となる。

ちなみにドイツで盗難された高級車の多くもリトアニアに向かい、ここからロシア、あるいはタジキスタンに輸出されている。というのもタジキスタンの法律では、盗難車でもこれを「知らないで」購入した場合、所有権は購入者に移るからだ。こうして普通なら手の出ないドイツの高級車が、ドイツの市場価格よりも30~40%減額で販売されており、あちこちで高級車ばかりが目に付く。リトアニア、タジキスタンの警察もこれはよく知っているが、地元のマフィアからお金をもらっているので、取り締まりには関心がない。時々申し訳程度に小さな取締りを行うと、盗難車を押収、警察の努力の結果と宣伝に使用している。

追記。古いデイーゼル自動車の市内乗り入れ禁止令に悩む自動車業界は、新車購入キャンペーンを開始した。「古いデイーゼル車(EURO 1~4)を保有している人が、新車を買うと割引します。」というもの。トヨタ、BMW、メルセデスは2000ユーロまでの割引という小額の割引に留まっているが、排ガス違法操作でイメージダウンに悩むVW社は、「最高1万ユーロまで」割引を提供している。ポロなどの利鞘の少ない小型車では2000ユーロだが、"Touareg"などの大型車には1万ユーロの割引が提供されている。フォードやルノーも車種により、それぞれ8000ユーロ、あるいは7000ユーロの割引を提供している。割引期間はVWが年末まで。フォードは10月末までと短い。各社がどんな割引をどの車種に対して提供しているか、直接、メーカーまでお問い合わせください。


輸入される全損車。
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