空き巣にご用心   (18.07.2016)

ドイツでは都市部での空き巣の増加が問題になっている。空き巣、ドイツ語では"Einbruch"といい、日本で言う侵入窃盗、侵入強盗に相当する。ただし空き巣の方が言葉が簡単なので、ここでは引き続き、空き巣という言葉を使用します。2015年の犯罪白書によると空き巣の数は前年比で10%上昇、15万件以上の被害報告があった。ドイツよりも人口の多い日本では年間9万件強。人口を無視してもドイツで発生する空き巣は日本の1.7倍。さらに日本では空き巣の検挙率は脅威の50%。しかし日本人は、「侵入窃盗では50%しか検挙されていません。」とこの検挙率に満足していない。ちなみにドイツの警察の侵入窃盗の検挙率はわずか15%で、気が遠くなるほどの低い検挙率だ。早い話、ドイツでは空き巣に遭う確立が高く、又、空き巣にやられても犯人が捕まる可能性はほぼない。これが原因でミュンヘンやベルリン、デユッセルドルフなどの大都市はいうに及ばず、アウグスブルクのような町でも、「警察に任せて置けない。」と"Bürgerwehr"(自警団)が結成され、町内をパトロールしている。しかしその警護団の実態はアクション(殴り合い)を探しているネオナチなどで、信用できる団体ではない。

人口別で見ると「空き巣率」のトップを飾るのはブレーメン、これにお金持ちのハンブルクが続き、ベルリンは三番目。空き巣というと夜に頻繁に起こりそうだが、22時~8時までの「空き巣の時間」に空き巣があったのは全体の15%に過ぎない。すなわち空き巣は、主に昼間に仕事をしている。空き巣の出勤時間は10時から。空き巣がピークを迎えるのは12時~14時で、15時を過ぎると圧倒的に少なくなる。理由は簡単。夜に仕事をすると人通りが少ないので、巡回中の警察の目に付きやすい。昼間は市民の数が多くて、群集に簡単に紛れ込んでしまえる。さらに仕事に出かけて留守の家が多く、空き巣にはうってつけの時間だ。そして空き巣も季節業で、うす暗くある秋から冬にかけて空き巣はピークを迎える。

「空き巣が増えている。」というと、「難民の仕業。」と邪推する方も多いが、空き巣の大部分はルーマニア、ブルガリア、アルバニアの窃盗大国からやってくる窃盗団の仕業だ。勿論、ここで紹介したマグレブ諸国からの難民、それに有名なポーランドの窃盗団も活躍しているが、圧倒的に大いのは南ヨーロッパからの窃盗団だ。EU統合により国境での検査がなくなり、窃盗団に理想的な環境を提供しているのが、空き巣増大の原因になっている。空き巣が好むのは、静かな場所にある一軒屋。見つかり難く、高価な"Beute"(獲物)が期待できる。その一方でアパートなども窃盗団の目標になっている。買い物に出かける際に窓を密閉せず、"gekippt"(斜めに開けて)の状態で出かける人が多いためだ。自宅に帰って換気する手間を省くために窓を半分開けていると、あとは針金で「あっ」という間に窓を開けることができる。買い物で自宅を出る際は、窓をしっかり鍵を閉めておこう。

又、空き巣というと自宅への侵入窃盗を想像するが、会社のオフィスや倉庫、工場へ侵入も多い。つい先日、数多くの倉庫を荒らしていた窃盗団が逮捕されたが、その手口は実に巧妙だった。仕事に使うバンを害虫駆除対策の車に塗装、終業後に堂々と工場や倉庫の前に車を止めて工場に侵入しても誰も不審に思わなかった。デユッセルドルフにある中小企業の日本企業のオフィスは、ほどんとが侵入窃盗を経験している。以前は、「窃盗に入っても盗むものがないと、設備品を壊していく。これを避けるため、ご褒美に200ユーロくらい包んで置いておくほうがいい。」などという冗談まで交わされていた。以前、勤めていた会社でも窃盗団に侵入された。鍵を「あっ!」という間に開けて侵入、金庫を溶接バーナーでカット、貴重品を盗んでいった。会社の上司が、「貴重品は帰宅する前に、ちゃんと金庫に入れておきなさい。」と口うるさいので、会社の経費で買った当時高価なデジタルカメラを金庫に入れていたので、これも盗まれてしまった。逆に自分のデジタルカメラは金庫にいれず、鍵もかけないで引き出しに入れていたが、無事だった。警察曰く、「入り口の鍵に傷がないので、合鍵を持っていたか、それとも慣れた窃盗団の仕業だ。」との事。鍵を閉めても、空き巣対策にはなりません。二度も空き巣にあってからやっと会社は重い腰を上げ、窃盗団にも見えるように警報機を設置、これでようやく空き巣被害が止まった。

警察は10年以上も前から自宅の玄関、窓には空き巣の侵入を困難にする技術上の対策を呼びかけている。お陰でそのような対策を施した窓、玄関が増え、2015年は空き巣の42%が未遂に終わっている。とは言えアパートを借りている身で、個人でそのような工事を施工するのは難しい。工事には大家の許可が要るし、費用も馬鹿にならないからだ。そんな場合は、古典的な方法が効果的。ご近所に「明日から1週間留守にします。」と伝えて、夜に留守なのに明かりがついていないかチェックしてもらおう。この方法で結構数多くの空き巣が捕まっている。ドイツ人にはアジア人の顔は「すべて同じ」に見えて、中国人、韓国人、日本人の見分けがつかないので、ご近所が顔を覚えるまで、付き合うことが欠かせない。愉快な検挙例もある。牧師の自宅に侵入しようとした空き巣は、健康保険のプラスチックカードで玄関の鍵を開けようとした。ところが間抜けなことにカードが割れてしまった。割れた半分、それも自分の名前が書かれた半分が、玄関の内側に落ちてしまった。この空き巣は翌日、牧師を尋ねる振りをして落としたカードの半分を回収しようとしたが、牧師が呼んだ警察に逮捕されてしまった。

空き巣件数の上昇に伴いドイツ政府もようやく事態を重く見て、毎年削減されていた警察の予算を増やして、警察官の数を増やす予定だ。内務大臣は、"Hilfspolizisten"(補佐警察官)を導入、正規の警察官ではなく、空き巣対策だけの訓練を受けた軽装備の警察を導入しようとしたが、警察、そして野党の非難にされされている。手抜きの訓練では空き巣が抵抗した際に役に立たず、補佐員が身の危険にさらされて警察を呼ぶことになるというもっともな意見だ。よく考えもせず、選挙民にアピールする目的だけで提案されたこの案が、実施される見込みはほとんどない。その一方で、警察内部ではようやくドイツ全土で空き巣の捜査をする特別班が構成されつつある。東欧からの窃盗団は空き巣をしながら常に移動するので、州の境界を越えた警察の連携を高めて、空き巣を検挙しようとする試みだ。また、警察も警戒の重点を空き巣警戒に移して、空き巣の仕事時間には頻繁に住宅街をパトロールしている。一度、夜に車に乗って出かけると、赤信号で横に止まったパトカーから警察官が身を乗り出すようにしてこちらを観察していた。ある時は警察がアパートの前でいかにも怪しい身なりの容疑者を見つけると職務質問、持参していた仕事道具を押収、身元確認するために署まで連行していった。一見すると素人にはどこが怪しいのかわからないが、警察には一目で空き巣を識別できるように訓練されている。

「お金よりも安全優先」という方なら、セキュリテイーの整ったアパートを借りることもできるが、そいう方は少数派だろう。そこで頼りになるのは警察のパトロールと近所付き合い(予防措置)、それに"Hausratversicherung"(事後措置)になる。この保険はすでにここで紹介したとおり家財や財産に掛ける保険で、空き巣被害の際は、被害を補償してくれる。ただし要注意。被保険者に"grober Fahrlässigkeit"があると、「空き巣の侵入を容易にした。」と判断されて保険の適用を拒否される。具体的に言えば窓をちゃんと閉めず斜めに開けた"gekippt"の状態で留守にして、空き巣にやられた場合。窓を斜めに空けて状態は、全開しているのと同じとみなされて保険は利かない。例えそれがバルコニーのドアでも。ドイツの玄関のドアは自動で閉まってしまうので、「鍵を回して施錠しなくても安全。」と思いがちだが、古いドアは上述の通りカードで簡単に開けることができる。出かける前にしっかり鍵を回して施錠しておかないと、保険が降りないケースもある。ところで安全なドアや窓のお陰で運よく空き巣は退治することができても、ドアや窓が壊された場合はどうすればいいのだろう?その場合は、大家が壊されたドアや窓を修理する義務がある。大家は賃貸人が住める環境を提供する義務があり、これが空き巣の仕業で不可能になってしまうと、大家は悪くないが、修繕をするのは大家の責任となる。日本人が賃貸人だと、大家は賃貸人の費用で治させようとするのでご注意あれ。



所持品をチェックして、
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署まで連行される。
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