Preisbindung (17.10.2016)

インターネットショップが広まり続ける中、店舗型の商売は苦戦を強いられている。ここアウグスブルクでも市役所からわずか300m離れた場所にあるビルは、がらんどう。市内は駐車場の問題も加わって、客足が離れる一方だ。そんな市内の一等地の店舗で頑張っているのは、レストラン、スーパー、そして薬局だ。薬局も一軒だけのケースは珍しく、その斜め向かいも薬局で、同じ通りに4~5軒も軒を連ねている。スターバックスやマクドナルドを上回る店舗数の理由は、コーヒー並みのそのマージン(利益率)の高さにある。お医者さんから処方箋をもらって薬を薬局で買うと、9ユーロが薬局の収入になる。市内の一等地、隣が医者の診療所だったりすると、薬を求める客が列をなしている。薬局の組合が出している統計では、薬局の売り上げの平均は200万ユーロ!!なんというおいしい商売だろう。道理で薬局が多い筈だ。社会の高齢化、ドイツ人の慢性的な肥満化に伴い、病気になる人はうなぎ登り。まさに客が尽きる事のない商売だ。

医師の処方箋なしで買える薬、頭痛薬、抗アレルギー薬、下痢止めなどは、ドイツの薬局で日本の半額程度の値段で買える。ただし隣の薬局に行っても値段は変わらない。ほとんどの薬局が、定価販売をしているからだ。それでも当初は、「日本より全然安い。」と感激する。ところがインターネットで検索すると、同じ薬がさらに半額で買えるのにビックリ。ネットでは高い店舗が必要ないので、安価で提供することが可能になる。頭痛薬、抗アレルギー薬、下痢止めなどは、すでにパテント(特許)が切れているので、製薬会社はただのパテントを用いて、大量に薬を生産する。日本の製薬会社と違って欧州全域、そしてロシアや中近東、さらにはアフリカ、アジアでも販売するので、その生産量が桁違い。結果、日本では3000円もする下痢止めが、ドイツでは200円程度で買える。この値段でインターネット薬局、さらには製薬会社も儲かるのだから、生産コストは推して知るべきだ。インターネットで買うと郵送料がかかるが、通常、20ユーロ以上買うと送料は無料。薬の使用期限は2年ほどあるので、いつも買う薬があれば、半年、あるいは1年分買い置きしておけばよい。

薬がこんなに安く買えるまでは、長い道のりだった。以前は薬をインターネットで販売することは法律で禁止されていた。薬局組合が政治家に陳情して、薬局を通販(当時はまだインターネットが発達していなかった。)することを禁止していたからだ。ところがインターネットが普及を始めると、オランダのインターネット薬局がドイツ語のホームページを作って、安い値段で薬の販売を始めた。ドイツの法律に縛られない、オランダの薬局ならではの商法だ。ドイツの薬局は、「これではボロい儲けがなくなる。」と心配、一致団結して抵抗したが、欧州裁判所で負けた。以降、処方箋が必要ない薬の販売がインナーネット上で可能になった。以降、ドイツ国内でもインターネット薬局はが数多く出現、目を疑うような安い値段でしのぎを削っている。

「ネットで買うとこんなに安いなら、処方箋の薬もネットで買えば安い?」と思ってしまう。しかし処方箋が必要な薬は、薬局で買うのと同じ値段になっている。これはドイツの薬局の最後の砦、"die Arzneimittelpreisbindung"(薬定価格制度)のためだ。元来この制度は、薬を必要とする患者が、どの町のどの薬局でも同じ値段で薬が買えるようにする目的で導入された。当初は薬の値段の高騰を避ける目的だったが、インターネット薬局の出現で必要ない法律になっている。それどころか、今日では薬局の高収入を保障する最後の武器となっている。

ところがここでもオランダのインターネット薬局が攻勢に出た。慢性的な病気を抱えて同じ薬を常用しなければならない場合、患者の月々の出費は馬鹿にならない。パーキンソン病の患者の団体はドイツの薬局組合に割引を打診したが、薬局団体はこれを拒否。そこでオランダのインターネット薬局に相談すると、こちらは大幅割引を提供。結果、パーキンソン病を患う患者は、インターネットで薬を注文、毎月数百ユーロの節約になっていた。ところがドイツの薬局団体は、「これはドイツの法律、"Arzneimittelpreisbindung"に抵触するものだ。」と訴えた。ところが欧州裁判所はドイツの法律、"Arzneimittelpreisbindung"は外国企業のドイツ市場参入を妨げるのであると判決、ドイツの現行の法律を無効と宣言した。

この判決を受けてドイツの薬局団体は、「ドイツ国内における薬の提供を脅かすものである。」と抵抗した。インターネットで薬を注文すると、処方箋が必要、必要ないにかかわらず、配達まで4~5日かかる。しかし薬局では即日で買える。このインフラを維持するのは金がかかる。インターネットで安価に処方箋が必要な薬が手に入るようになると、金のかかるインフラを抱えている薬局は不利で、やっていけないという苦情だ。消費者は逆に、「それじゃ今後は処方箋の必要な薬も安く買えるようになるの?」と喜んでしまうが、そうは甘くない。ドイツの薬局団体は、儲かるチャンスが失われていくのを指を加えて眺めているようなことはしない。薬局団体は政治家(厚生省)への太いパイプを利用、処方箋を必要とする薬の通販を禁止するように陳情した。厚生大臣はこの陳情を受けて、インターネット上で処方箋が必要な薬の販売を禁止する法律を準備中だ。残念。

参考。
処方箋の要らない薬は、"Rezeptfreie Medikamente"(複数形)という。日本と違ってドイツでは睡眠薬も処方箋が要らなく、薬局で買える。この処方箋が要らない薬のほとんどは、"Generika"と呼ばれるパテント期限の終了した薬を差す。わかりやすいように頭痛薬で言えば、オリジナルはバイヤー社のアスピリンだ。パテントが切れたので、同じ成分の薬、ゲネリカは"Paracetamol"の名前で複数の製薬会社が製造、販売している。オリジナルを薬局で買うと20錠入りで10ユーロもするが、ゲネリカをインターネットで買うと1ユーロ。雲泥の差だ。日本では、「やっぱりオリジナルじゃないと。」という方が少なくないが、それは偏見です。成分が同じなので、効き目に違いはありません。単に名前が違うだけ。ドイツの健康保険は医療費を節約するため、「ゲネリカを処方するように。」とお達しを出しており、ドイツの医書はこれを大方守っている。


半年分まとめて注文。
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介護保険制度、厳密に言えば介護度のクラス分けが2017年から変更される。これまでは介護度認定の際、肉体的能力の欠陥が介護度決定の指針になっていた。しかし認知症患者の場合、とりわけ自宅で介護されている場合は、肉体的な能力は衰えていないケースが多い。結果、認知症が進んでいるのに、介護度が低い、あるいは全く介護が必要と認定されないという不具合が生じていた。この不具合を解消するため、新しい制度では精神的な障害によっても、肉体的な障害同様に介護度が設定されることになった。

この機会に介護度も変更される。これまでは1~3、正確には0~3の介護度だったが、2017年から日本同様に1~5の介護度が導入される。介護度1では、1日1回、介護士が訪問、1時間まで程度の介護で済み、夜間の介護が必要ない場合。介護度1が認定されると、125ユーロ/月の介護補助金が出る。介護度2では1日1回(2時間まで)の介護で済み、夜間の介護はごく稀に必要なケース。自宅介護で済めば316ユーロ/月の介護補助金が出る。介護施設に日中の面倒を頼む場合、689ユーロまで保険で費用を持ってくれる。介護度3は日中6時間までの介護が必要で、夜間の介護も2回まで必要なケース。自宅介護で済めば545ユーロ/月の介護補助金が出る。介護施設に日中の面倒を頼む場合、1298ユーロまで保険で費用を持ってくれる。これ以上の介護度、さらに詳しい内訳はこちらで紹介されているので、参照あれ。

この介護制度の変更は、ドイツ国内でも増え続ける認知症患者がきっかけとなった。ドイツの厚生省の統計によるとドイツには認知症を患う患者が160万人おり、毎年、30万人が新たに発病しているという。社会の高年齢化によりこのペースは今後加速され、2050年には患者の数は300万人を突破、毎年40万人の規模で患者が増えるという。すなわち100人/日も新たにこの病気の患者が増える計算だ。ドイツよりも高年齢化が進んでいる日本ではドイツのほぼ3倍、460万人が認知症に苦しんでいる。日本はドイツの1.5倍の人口を抱えていることを考慮しても、この数字はあまりにも高く、日本は認知症の最前線だ。

しかるに日本で認知症治療薬として処方される薬の効果は非常に疑わしい。薬を製造してる会社は、「薬を常用することにより、病気の進行を遅らせることができる。」という。しかしこれは初期の期間に限られる上、ひどい副作用がある。家族の一員として、すでに認知症に苦しんでる親にさらに強い不快感を引き起こす薬を飲ませて、さらに苦しめる事の意味を疑う。薬を服用すれば病気が治る、あるいは病気の進行が止められるなら話は別だが、うまくいっても「初期に限って病気の進行をある程度遅らせる事ができる。」という程度なのだ。効果が出ているのか、家族にも全くわからない。アルツハイマーというと決まって副作用の大きなこのような薬を処方する日本の医療は、患者やその家族ではなく、医師や製薬会社の利益を優先しているのではないのか。しかし幸いなことに、世界中の学者がこの病気の解決に日夜努力をしている。お陰で認知症の研究はかなり進んでおり、治療薬の発見も現実的になってきた。

認知症のおよそ2/3はアルツハイマー症が原因だという。アルツハイマーの場合、脳の神経末端にこびりつく"Plaque"と呼ばれる淡白質、医学用語では"Amyloide Plaque"、又は"Amyloidbeta-Proteine"と呼ばれる、が原因と考えられている。このタンパク質はデータの転送をブロックするだけでなく、脳細胞がこのたんぱく質の薄い層に覆われると、脳細胞は炎症を起こして次第に破壊され、最後には死に至る。そこでスイスと米国の製薬会社の科学者は、"Antikörper"(英:Antibody")と呼ばれる植物性タンパク質をアルツハイマー初期の患者、165人に対して1年間適用したみた。その結果、"Plaque"は明らかに減少して、思考能力の減少も最小限度に抑えられた。そして投与された"Antikörper"の量が多く、そして治療期間が長い患者は、大部分の"Amyloide Plaque"を取り除くことができたという

今後は臨床実験対象をを2700人に増やして、さまざまな患者に対して効果を見極める。仮にテストがうまく行っても、薬として認可されるまでのは「まだ数年かかる。」というので、過大な期待は禁物だ。それでもこれまでは実質上、治療方法がなかったことを考えれば、大きな進展だ。これまでのテストでは、アルツハイマーの初期段階の患者に対してのみ効果があったというので、すでに発病している患者、その家族にとっては、薬が出来上がっても役に立ちそうにない。ちなみに日本でもこの分野の研究はかなり進んでいる。日本の学者は、"Tau-Protein"(タオタンパク質)がアルツハイマーの下手人ではないかと疑っている。普段なら脳の中で成分の運搬の役目を果たすこのタンパク質が、認知症患者では組織が破壊されてばらばらになって、脳細細胞に蓄積しているからだ。これが蓄積されると"Amyloide Plaque"同様に脳細胞が破壊され、認知症を引き起こすと考えられている。どっちが本当の原因か、双方の病状に関係があるのかまだわかってないが、西欧では"Amyloide"が"Tau-Protein"の破壊に影響しているのではないかと考えられている。このため、"Amyloide"を取り除く"Anti-Körper"の発見に躍起になっている。

何しろ世界中でアルツハイマーの患者は5千万人近く、毎年、7百万人を超える患者が増えているので、薬の開発に成功すれば、アスピリンとビアグラに続く大ヒット商品になる。スイスの製薬会社、それに米国の製薬会社2社の合計3社は、最も効果的な"Antikörper"の開発にしのぎを削っている。しかし4~5年後に薬が出来上がった場合でも、海外で認可された薬が日本で認可されるまで、さらに4~5年かかることを考えると、日本のアルツハイマー患者の未来は暗い。日本の製薬会社にも、是非、頑張って欲しい。

最後にいいニュースがある。上述の通り、認知症の1/3のケースでは、アルツハイマーは原因ではない。他の病気が認知症を引き起こしている。脳には"NMDA-Rezeptoren"という脳の信号を伝達する働きをもつ細胞がある。健康な脳ではこの細胞は受けた信号を脳の必要な部署に伝達、脳は正常に機能することができる。ところが何かの理由で自身の免疫が"Antikörper"と呼ばれる蛋白質を製造、これが"NMDA-Rezeptoren"の脳との接合部分に入り込み定着、信号の伝達を妨げることで認知症が発病することをベルリンの病院、"Charité"の医師が発見した。以来、同病院では数年前から、このタイプの認知症の治療を行っている。

"Charité"によると、体が"Antikörper"を製造しているか、簡単な血液検査でわかるという。この"Antikörper"が検出された場合、透析をすれば血液の中の"Antikörper"の大半を取り除くことができる。透析後、症状は早期に改善される。ただしすでに"Antikörper"により脳に障害が起きてしまっている場合、この脳障害を直すことはできない。そこで何よりも大事なのは、「物忘れが多くなった。」と思ったら、「アルツハイマーだったらどうしよう。」と悩まず、体内に"Antikörper"が製造されているか、チェックしてもらうこと。早期に発見できれば、認知症が発病することなく、通常の生活を送ることができるからだ。ただしこの"Antikörper"は、透析後も免疫が引き続き製造するので、薬を飲んで"Antikörper"の発生を抑える必要があるが、認知症が発病することを考えれば、何でもないだろう。

日本でも同様の治療が行われているか不明だが、ドイツに滞在してドイツの健康保険に加入している人は、健康保険がこの検査、治療費用を持ってくれる。ドイツの医療も、まだまだ捨てたものではない。

認知症にかかった脳(左)と正常な脳
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Garantie und Gewehrleistung Nr.2 (17.09.2016)

以前、同じテーマで記事を書いたものの、「結局、何処が違うの?」という方が多いのが現実。これをはっきり区別できる体験をしたので、もう一度取り上げます。去年買った車、車体は"Nanoversiegelung"(ナノ コーテイング)されており、雨が降ると屋根やボンネットに丸い水溜りが出来る。車が汚れても、洗車して乾かすだけで結構、綺麗。ワックスかける手間が省けて重宝。とは言うものの、ワックスの輝きには及ばない。そこで天気もいいので、初のワックスがけ。すると始めて気が付くことが多いです。例えば「BMWの鼻」の上の部分、「ペコペコ」と凹みます。そう、プラスチック。昔は全部メタル。軽量化のため?昔は乾燥重量1670kg。今のタイプは乾燥重量が1785Kgと、軽量化の努力空しく、100Kg以上も重くなってる。ちなみにマツダ6の乾燥重量は1480Kgで、ほぼ300Kgも軽い。道理で燃費が良かったわけだ。

ワックスをふき取る際、後部のバンパーに装着されている"Parksensor"(駐車センサー)が、「ポロリ」とバンパーの中に落ちてしまう悲劇が。固定されておらず、はめてあっただけ。「これは揉めるぞ。」とすでにブル~。日本なら、「まだ保障もあるし、明きからに欠陥なのですぐに直してもらえる。」と心配する必要はない(筈)。しかしここはドイツ。そんなに簡単に話が運ぶなら、"Betonkopf"(コンクリート頭)というドイツ人の異名は生まれていない。BMWの支店に行くと、「これは"Karosserieschaden"(車体損傷)なので、保険の対象外。」とBMWのドイツ人。そら見ろ!そう言うだろうと思ってた。「ちゃんと車を見ろ、何処に傷がある?」「ちゃんと車を作っていないのが原因で、車体損傷とは関係ない。」と言うも、「これは"Karosserieschaden"(車体損傷)なので、保険の対象外。」とBMWのドイツ人。まさにコンクリート頭。しかし、「修理を頼んだら、いくらかかるの。」と聞くと相好を崩し、「バンパーを外して金具を取り替えるので、200ユーロ程度は見積もっておけ。」と修理担当のドイツ人。「高いから他で修理に出します。」と言うと、明きからに残念そう。

明きからに車の不具合なのに、自費で修理するのは納得できない。こういうことがあるので、ドイツでの生活には弁護士保険が欠かせない。早速、電話で相談。すると弁護士曰く、「メーカーが任意で提供している"Garantie"(保障)は、メーカーが保障内容(対象)を自由に決めることができる。往々にして、起こりやすい故障は除外されているので、メーカーが保障外といえば、おそらくその通りだ。」との事。100%正確なことは保障証を読む必要があるが、書面のチェックを弁護士に頼むと1時間200ユーロ。1時間で終わることは滅多になく、2~3時間なんてザラ。被害総額200ユーロ(BMWの言い値)で、そこまでするのは割に合わない。「ところで車の製造年はいつ。」と聞いてくる弁護士。「2012年です。」といえば、何かひらめいた様子。これまでの面倒そうな声から、うって変わって生き生きとした調子に一変。「それならチャンスがある。」と弁護士。氏曰く、「メーカーは売った車がちゃんと機能するように"gewährleisten"(保障する)義務がある。」「部品がボロボロと脱落するのは車の欠陥なので、メーカーを"gewährleisten"(保障する)で訴えれば勝てる。」とすっかり€を目に浮かべてやる気満々の弁護士。

念のためここで再度、説明しておこう。日本で言う"Garantie"(保障)は、ドイツではメーカー側の任意のサービスだ。その一方で、"Gewährleistung"は法律で決められている消費者の権利で、新品の製品には2年間の"Gewährleistung"が条件になっている。ただし購入後、6ヶ月目までに不備が見つかった場合は、売り手の費用で修理しなければならない。ただし例外もある。この不備は購入後に、買い手の不適切な使用で発生したと売り手が証明できる場合、売り手はこの義務から解放される。問題はこの6ヵ月を過ぎてから。この時点でも"Gewährleistung"は有効ではあるが、この保障を利用するには、製品の不備が購入の時点ですでに存在していたことを買い手が証明しなくてはらない。中古車の場合、デイーラーには1年間の"Gewährleistung"を行う義務がある。すなわち6ヶ月以上経っている(しかしまだ1年以内な)ので、こちらがこの落ち度が最初からあったことを証明しなくてはならない。具体的には鑑定士にバンパーを鑑定してもらい"gutachten"、その鑑定書"Gutachten"を根拠にBMWを"Gewährleistung"の義務で訴えれば、勝てるというわけだ。

弁護士保険で弁護士費用と裁判費用はカバーされるが、鑑定費用は含まれない。そしてこの鑑定費用は安くない。簡単な鑑定書でも100~200ユーロもする。早い話が、BMWを"Gewährleistung"で訴えれば勝てて気持ちがいいが、特をすることはない。これに費やされる時間と手間を考えると、割に合わない。弁護士にその旨伝えると、「では"Mediation"を試してみよう。」という。これは弁護士が争いの相手方と連絡を取り、法的な状況を説明、裁判所を通さずに和解でトラブルの解消を努める方法だ。関係者が直接、「言い合い」をする場合と異なり、弁護士が法的な根拠を挙げて説明すると、裁判になった場合には分が悪いことが相手に伝わる上、こちらが弁護士保険に入っているので、訴訟も辞さないことが伝わり、相手も聞き分けがよくなる。そこで車を買ったBMWの店頭名、販売人の名前、連絡先を伝えて、この"Mediation"で解決を図ることにした。

数日後、弁護士から連絡があり、「先方が話したいと言っている。」との事。電話するとBMW支店のセールス部長。同氏曰く、「暴力なくしてセンサーが外れることはない。車をぶつけたんじゃないか。」と案の定、客の責任にしてくる。BMWの弁護をすると、これはBMWに限ったことではない。ドイツ人はいつも決まって同じ反応をする。そこで証明の写真を送り、「どこに損傷があるか説明してくれ。」と言うと、「駐車センサーが簡単にポロリと落ちるようなことはない。」と回答を避ける。「ちゃんと取り付けていないから、簡単にポロリと落ちるんだよ。明きからに"Gewährleistung"の対象だろう。」というと、少し納得した様子。「車を持ってきてくれれば、無償で修理する。」と譲歩してきた。もっとも車は300kmも離れた町で買ったので、「はい、明日行きます。」というわけにもいかない。それに往復すると1日無駄になる。「こちらにあるBMWで修理させてくれ。」と言うも、それはできないという。BMWの支店と言え、これを経営しているのは個人で、BMWと契約して車を販売しているだけ。他の店で修理した修理費を持ちたくないというのは、理解できる。

「こちらのBMWで聞くと、バンパーを取り外して金具を交換すので200ユーロも修理費がかかるといっている。」と言うと、"Ach, Paparapa!"(意訳すると「そんなのは大嘘!」という意味。)とセールス部長。同氏曰く、「バンパーなんか取り外さなくても、車を"Hebelbühne"(修理台)に上げて下から腕を伸ばせばセンサーが拾えるから、接着剤をつけてはめるだけ。10分でできる。」との事。「それなら近くにある修理工場で修理させます。」と先方の申し出を断って、ジムの近くにあるトルコ人経営の修理工場に車を持ち込んだ。「BMWはバンパーを外さなくても、下からセンサーが拾えると言ってる。」と言うも、「本当にできるかどうか、やってみなくちゃ保障はできない。」という。2時間後、「どうだった。」と聞くと、「外さなくても修理できた。」との事。アウグスブルクのBMWの言う、「バンパーを外して、金具を交換して、、。」云々は、修理費を高くする目的の嘘です。BMWに修理に車を持ちこむ方は、用心されたし。「お幾ら?」と聞くと、「20ユーロくれたら嬉しい。」とトルコ人。20ユーロ札を出すと、彼のポケットに消えた。接着剤で取り付けるだけで20ユーロは高い気もするが、BMWに比べれば同じ作業が1/10のコストだ。

修理工場で順番を待っていると、「車からおかしな音がする。」と初老のドイツ人が相談に来た。症状を聞いたトルコ人曰く、「それはブレーキの錆だよ。」と言い、「車はVWでしょ。」という。「ゴルフだ。」とドイツ人。興味を持って話を聞いていると、「VWのブレーキは錆びる。」との事。一度錆び始めたら、錆びをとってもすぐに錆が戻ってくるので、取り替える以外に方法がないという。関係ないのに、「VWのブレーキってそんなに錆びるの?」と聞けば、「VW特有の病気。」との事。トヨタ同様に、コスト管理が厳しいVW。部品を届ける下請け会社に、「安くしろ」と圧力をかけているので、品質が下がっているようだ。BMWは平気で嘘をつくが、そこまではひどくない?

こういう話を書くと、「ドイツの車は客扱いがひどいから、日本の車にしよう!」と思われるかもしれない。しかしドイツ人が販売店を経営する限り、日本の車を買っても同じ体験をすることになる。マツダの新車でエンジンの損傷があったが、販売店は保障修理を拒否、ドイツのテレビで全国放映されていた。ドイツで生活するには、弁護士保険は欠かせない。プライベート、交通、賃貸関連をカバーする保険が年間で200~240ユーロ程度する。もっと安い保険もあるが、「困って電話しても通じない。」会社は安い。それでは役に立たないので、使える弁護士保険はその程度かかる。知り合いのドイツ人は、「雪かきをしていないので、お前の家の前で転んで怪我をした。」と訴えられて、裁判費用、弁護士費用で数万ユーロ払ったと言う。他の場所で転んでも、「お前の家の前で、、。」と責任を押し付けてくるのがドイツ。そんなときに助かるのが弁護士保険です。「弁護士保険の数百ユーロで済むなら安いものだ。」という彼自身、「要らない。」と数百ユーロを節約したばかりに、数万ユーロも払う結果になった。ドイツ生活の税金だと思って、加入しておきましょう。


BMW曰く、「修理代200ユーロ。」
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帰国。家具を捨てるにも結構な大金がかかるので、残った家具はモロッコ人に進呈することに。親族一族を連れてきたモロッコ人は、システムキッチンは言うに及ばず、壁に埋め込んだ棚、床のフローリングまで外してもって行った。業者に頼んで破棄してもらうと大金がかかるぞ!と心配していたので、一安心。そのモロッコ人、家財を外し終わるとポケットから携帯電話を出し、「日本に帰るのなら、日本の携帯電話が要るだろう。」とポケットからiphoneを取り出してきた。「俺には読めないが、Softbankと契約しているようだ。日本に帰れば使えるだろう。」と日本人から盗んだ携帯電話を販売してきた。「誰もかけてこないし、かける相手も居ないから携帯なんて邪魔になるだけ。」と断ると、とても残念そうな顔。

実際、「携帯を落としたようです。」と連絡をいただく事が多い。盗難の手口が見事なので、盗まれたことにさえ気がついていない。日本から来たばかりの日本人はスキだらけ。レストランなどで上着に貴重品を入れたまま椅子にかけていたり、鞄の外のポケットに携帯電話をいれている。これじゃ、「盗んでください。」と言っているようなもの。しかし、「そんな貴重品管理をしていると、盗まれますよ。」と言っても、相手の気分を害するだけで、盗難を妨げる手助けにはならない。そこで舌を噛んで我慢すると、早ければ1週間ほどで、「盗まれました。」とメールが届く。ブレーメンに出張に行った50代のドイツ人男性、1週間後に顔を合わせると、「携帯を盗まれた。」という。「契約がまだ1年以上残っているから、盗まれた携帯の料金を払わなきゃならないことに腹が立つ。」とご立腹。ドイツ人が盗まれるのだから、日本からきたばかりの日本人を責めるのは、可哀想。盗まれた携帯電話は上述のように仲間内で安く売買されるか、Ebayで安く提供されている。ドイツだけで年間350万台もの携帯が盗まれているので、警察もお手上げ。基本的に盗まれた携帯電話を取り戻すことは不可能だ。

基本的にということは、例外もあるということ。携帯の製造元などは盗難対策のアプリを用意しており、これがいかに効果的か宣伝しているが、SIMカードを入れ替えられてしまうと役に立たない。そこでドイツの会社がSIMカードを入れ替えても、携帯、タブレット、ノートパソコンを取り戻せるプログラムを開発した。どれだけこのプログラムが効果的か実践するために、テレビ局と一緒に携帯の盗難の瞬間から、携帯を取り戻すまで一部始終をカメラで撮影した。まずはデイスコでテーブルの上に携帯を置いて席を立つ。別の席からカメラで撮影していると、10数秒で携帯は盗まれてしまった。別の場面では駅のベンチに携帯を置き忘れたというシナリオ。偶然ベンチに座ったドイツ人は、携帯が置かれていることに気づくと、これをさっさと盗んで、暗闇に消えていった。果たして盗まれた携帯を取り戻すことができるのだろうか。

携帯を盗むと、これを販売してお金を稼ぐのが目的なので、「あっ。」という間に持ち主が変わる。この場合でも携帯を盗んだのは男性だったが、数時間後には女性が保有していた。ドイツ人は、「盗難品だと知らなかった。」と言い張るが、ちゃ~んと知っている。その証拠に盗難された携帯を購入すると、SIMカードをすぐに入れ替える。この時点で通常の盗難防止アプリは役立たずになるが、このプログラムはSIMカードを交換しても機能を続けるばかりか、新しいSIMカードが入れられると、新しい電話番号を通報してくれる。さらには窃盗犯に気づかれないように内蔵カメラで携帯の新しい所有者の撮影をして、写真を送ってくれる。あとはアプリが送ってくれる地図を目当てに所有者の住所まで出かけて、持ち主に電話する。持ち主が現れたら携帯が送ってきた写真を見せて、「直ちに携帯を返さないと警察に通常する。」と言えば、盗まれた携帯は2台共、見事に所有者に帰ってきた。このプログラムには盗まれた携帯に入っているデータを消す機能もついているので、「個人的な写真」が入ってきてもすぐに対処できるが、この機能は有償となる。有償といっても、毎月わずか5ドルと安価だ。無償版は使える機能が限られているが、無償版があること自体、素晴らしい。ドイツに留学される方は携帯にこのプログラムをインストール、使い方を勉強してから留学しよう。

携帯同様にドイツでよく盗まれるものと言えば自転車。中古の錆びた自転車でも鍵をかけていないと、あっという間に盗まれる。高級な自転車だと鍵をかけていても盗まれる。自転車を盗むには高価な道具は必要なく、鍵を切断する"Bolzenschneider"を買うだけ。これがわずか20ユーロで買え、600ユーロもする自転車を一台だけ盗んで半額で売っても、投資額の15倍も儲かるからだ。自転車の窃盗団は、空き巣と同じくドイツの隣国からやってくる。先日捕まった窃盗団はポーランドからの「旅団」で、120台もの自転車を盗んでいた。ドイツ人も平気で自転車を盗むし、難民もドイツ人同様に気軽に自転車を盗む。2014年の統計では34万台の自転車が盗まれたと報告があったが、犯人が見つかるケースは1割以下なので、盗まれた自転車はまず帰ってこないと覚悟しておいたほうがいい。ドイツで自転車に乗るなら、丈夫な鍵と盗難保険は欠かせない。

とお客さんに説明すると、「それは困ります。」とお客さん。なんでも日本からわざわざ愛車をドイツまで持ってくるという。「盗まれたら、金では代償できません。」と熱く語るのだが、私が盗むわけではないで言われも困っちゃう。そんな方には、自転車用のGPSをお勧めします。一見するとブレーキランプのように見えるこの端末は、GPSのトラッキング端末だ。自転車を止めて携帯などからこのトラッキングをオンにしておくと、勝手に自転車が動かされると持ち主にアラームが届く。さらに自転車の移動経路を地図で示してくれるので、自転車泥棒を追跡することができる。

ドイツのテレビ局がその効果を実験をするために、新品の自転車を500ユーロで購入、このGPS端末を設置した。カメラで監視されているテレビ局の自転車置き場に自転車を止めると、鍵をかけていたのに"Bolzenschneider"で鍵を切られて数時間で盗まれてしまった。すぐに自転車を追跡しては面白くないと、翌日になってから自転車を追跡して、犯人の居所を突き止めた。犯人に監視カメラの写真を見せつけると窃盗を白状、しかし「自転車はもう転売したのでもっていない。」という。「自転車の購入費用を払うから、警察には言わないでくれ。」と頼みだす泥棒は、翌日、本当に500ユーロを工面してきた。別の実験では、盗まれた自転車はわずか数日でウクライナの片田舎で使用されていた。そう、このGPSトラッキングは世界中で使用可能なのだ。この件でもテレビチームはウクライナに飛び、盗難自転車に乗っているウクライナ人にブレーキランプに見えるGPS端末をアプリで点灯させると、持ち主に自転車を即座に返却した。さもないと警察に通報されるからだ。

中古の携帯、自転車を購入される場合は、盗難品をつかまされないようにする注意が必要だ。「Wifiしか使えません。」なんて携帯電話はほぼ盗難品。盗難品を買って、「SIMカードを入れ替えたからもう足は付かない。」と思っていると甘い。知らないうちにあなたの顔が撮影されて、新しい番号と一緒に本当の所有者に通報されているかもしれない。警察がやってきて、「盗難とは知らなかった。」と言い訳しても、携帯は持ち主に返されてしまう。さらに盗難品と知って購入したとみなされて"Hehlerei"で告訴される。仮に「知らなかった。」と立派な演技をしても弁護士費用だけで数百ユーロ、盗難品を買うのは割に合わない。中古品を買う場合は、所有者が購入した請求書、あるいは購入の証拠を見せてもらい、請求書と一緒に買うか、無理な場合は請求書のコピーをもらうこと。請求書を持っていれば、まずは本当も持ち主だ。仮に盗難品であったとしてもこの請求書を警察に提示して、「請求書を見せられたので、持ち主だと思って買った。」と言えば、"Hehlerei"で告訴されることはない。尚、ドイツの法律では盗難品は正当な持ち主に返却される。これに不服な場合は、盗難品を売った相手に損害賠償を求める必要があるが、住所は偽りの住所、名前もありきたりの名前なので、相手を特定することはほとんどできない。盗難品を買って得をすることはないので、「知りませんでした。」という演技で切り抜けられると安易に考えないようにしよう。


danke schön.
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空き巣にご用心   (18.07.2016)

ドイツでは都市部での空き巣の増加が問題になっている。空き巣、ドイツ語では"Einbruch"といい、日本で言う侵入窃盗、侵入強盗に相当する。ただし空き巣の方が言葉が簡単なので、ここでは引き続き、空き巣という言葉を使用します。2015年の犯罪白書によると空き巣の数は前年比で10%上昇、15万件以上の被害報告があった。ドイツよりも人口の多い日本では年間9万件強。人口を無視してもドイツで発生する空き巣は日本の1.7倍。さらに日本では空き巣の検挙率は脅威の50%。しかし日本人は、「侵入窃盗では50%しか検挙されていません。」とこの検挙率に満足していない。ちなみにドイツの警察の侵入窃盗の検挙率はわずか15%で、気が遠くなるほどの低い検挙率だ。早い話、ドイツでは空き巣に遭う確立が高く、又、空き巣にやられても犯人が捕まる可能性はほぼない。これが原因でミュンヘンやベルリン、デユッセルドルフなどの大都市はいうに及ばず、アウグスブルクのような町でも、「警察に任せて置けない。」と"Bürgerwehr"(自警団)が結成され、町内をパトロールしている。しかしその警護団の実態はアクション(殴り合い)を探しているネオナチなどで、信用できる団体ではない。

人口別で見ると「空き巣率」のトップを飾るのはブレーメン、これにお金持ちのハンブルクが続き、ベルリンは三番目。空き巣というと夜に頻繁に起こりそうだが、22時~8時までの「空き巣の時間」に空き巣があったのは全体の15%に過ぎない。すなわち空き巣は、主に昼間に仕事をしている。空き巣の出勤時間は10時から。空き巣がピークを迎えるのは12時~14時で、15時を過ぎると圧倒的に少なくなる。理由は簡単。夜に仕事をすると人通りが少ないので、巡回中の警察の目に付きやすい。昼間は市民の数が多くて、群集に簡単に紛れ込んでしまえる。さらに仕事に出かけて留守の家が多く、空き巣にはうってつけの時間だ。そして空き巣も季節業で、うす暗くある秋から冬にかけて空き巣はピークを迎える。

「空き巣が増えている。」というと、「難民の仕業。」と邪推する方も多いが、空き巣の大部分はルーマニア、ブルガリア、アルバニアの窃盗大国からやってくる窃盗団の仕業だ。勿論、ここで紹介したマグレブ諸国からの難民、それに有名なポーランドの窃盗団も活躍しているが、圧倒的に大いのは南ヨーロッパからの窃盗団だ。EU統合により国境での検査がなくなり、窃盗団に理想的な環境を提供しているのが、空き巣増大の原因になっている。空き巣が好むのは、静かな場所にある一軒屋。見つかり難く、高価な"Beute"(獲物)が期待できる。その一方でアパートなども窃盗団の目標になっている。買い物に出かける際に窓を密閉せず、"gekippt"(斜めに開けて)の状態で出かける人が多いためだ。自宅に帰って換気する手間を省くために窓を半分開けていると、あとは針金で「あっ」という間に窓を開けることができる。買い物で自宅を出る際は、窓をしっかり鍵を閉めておこう。

又、空き巣というと自宅への侵入窃盗を想像するが、会社のオフィスや倉庫、工場へ侵入も多い。つい先日、数多くの倉庫を荒らしていた窃盗団が逮捕されたが、その手口は実に巧妙だった。仕事に使うバンを害虫駆除対策の車に塗装、終業後に堂々と工場や倉庫の前に車を止めて工場に侵入しても誰も不審に思わなかった。デユッセルドルフにある中小企業の日本企業のオフィスは、ほどんとが侵入窃盗を経験している。以前は、「窃盗に入っても盗むものがないと、設備品を壊していく。これを避けるため、ご褒美に200ユーロくらい包んで置いておくほうがいい。」などという冗談まで交わされていた。以前、勤めていた会社でも窃盗団に侵入された。鍵を「あっ!」という間に開けて侵入、金庫を溶接バーナーでカット、貴重品を盗んでいった。会社の上司が、「貴重品は帰宅する前に、ちゃんと金庫に入れておきなさい。」と口うるさいので、会社の経費で買った当時高価なデジタルカメラを金庫に入れていたので、これも盗まれてしまった。逆に自分のデジタルカメラは金庫にいれず、鍵もかけないで引き出しに入れていたが、無事だった。警察曰く、「入り口の鍵に傷がないので、合鍵を持っていたか、それとも慣れた窃盗団の仕業だ。」との事。鍵を閉めても、空き巣対策にはなりません。二度も空き巣にあってからやっと会社は重い腰を上げ、窃盗団にも見えるように警報機を設置、これでようやく空き巣被害が止まった。

警察は10年以上も前から自宅の玄関、窓には空き巣の侵入を困難にする技術上の対策を呼びかけている。お陰でそのような対策を施した窓、玄関が増え、2015年は空き巣の42%が未遂に終わっている。とは言えアパートを借りている身で、個人でそのような工事を施工するのは難しい。工事には大家の許可が要るし、費用も馬鹿にならないからだ。そんな場合は、古典的な方法が効果的。ご近所に「明日から1週間留守にします。」と伝えて、夜に留守なのに明かりがついていないかチェックしてもらおう。この方法で結構数多くの空き巣が捕まっている。ドイツ人にはアジア人の顔は「すべて同じ」に見えて、中国人、韓国人、日本人の見分けがつかないので、ご近所が顔を覚えるまで、付き合うことが欠かせない。愉快な検挙例もある。牧師の自宅に侵入しようとした空き巣は、健康保険のプラスチックカードで玄関の鍵を開けようとした。ところが間抜けなことにカードが割れてしまった。割れた半分、それも自分の名前が書かれた半分が、玄関の内側に落ちてしまった。この空き巣は翌日、牧師を尋ねる振りをして落としたカードの半分を回収しようとしたが、牧師が呼んだ警察に逮捕されてしまった。

空き巣件数の上昇に伴いドイツ政府もようやく事態を重く見て、毎年削減されていた警察の予算を増やして、警察官の数を増やす予定だ。内務大臣は、"Hilfspolizisten"(補佐警察官)を導入、正規の警察官ではなく、空き巣対策だけの訓練を受けた軽装備の警察を導入しようとしたが、警察、そして野党の非難にされされている。手抜きの訓練では空き巣が抵抗した際に役に立たず、補佐員が身の危険にさらされて警察を呼ぶことになるというもっともな意見だ。よく考えもせず、選挙民にアピールする目的だけで提案されたこの案が、実施される見込みはほとんどない。その一方で、警察内部ではようやくドイツ全土で空き巣の捜査をする特別班が構成されつつある。東欧からの窃盗団は空き巣をしながら常に移動するので、州の境界を越えた警察の連携を高めて、空き巣を検挙しようとする試みだ。また、警察も警戒の重点を空き巣警戒に移して、空き巣の仕事時間には頻繁に住宅街をパトロールしている。一度、夜に車に乗って出かけると、赤信号で横に止まったパトカーから警察官が身を乗り出すようにしてこちらを観察していた。ある時は警察がアパートの前でいかにも怪しい身なりの容疑者を見つけると職務質問、持参していた仕事道具を押収、身元確認するために署まで連行していった。一見すると素人にはどこが怪しいのかわからないが、警察には一目で空き巣を識別できるように訓練されている。

「お金よりも安全優先」という方なら、セキュリテイーの整ったアパートを借りることもできるが、そいう方は少数派だろう。そこで頼りになるのは警察のパトロールと近所付き合い(予防措置)、それに"Hausratversicherung"(事後措置)になる。この保険はすでにここで紹介したとおり家財や財産に掛ける保険で、空き巣被害の際は、被害を補償してくれる。ただし要注意。被保険者に"grober Fahrlässigkeit"があると、「空き巣の侵入を容易にした。」と判断されて保険の適用を拒否される。具体的に言えば窓をちゃんと閉めず斜めに開けた"gekippt"の状態で留守にして、空き巣にやられた場合。窓を斜めに空けて状態は、全開しているのと同じとみなされて保険は利かない。例えそれがバルコニーのドアでも。ドイツの玄関のドアは自動で閉まってしまうので、「鍵を回して施錠しなくても安全。」と思いがちだが、古いドアは上述の通りカードで簡単に開けることができる。出かける前にしっかり鍵を回して施錠しておかないと、保険が降りないケースもある。ところで安全なドアや窓のお陰で運よく空き巣は退治することができても、ドアや窓が壊された場合はどうすればいいのだろう?その場合は、大家が壊されたドアや窓を修理する義務がある。大家は賃貸人が住める環境を提供する義務があり、これが空き巣の仕業で不可能になってしまうと、大家は悪くないが、修繕をするのは大家の責任となる。日本人が賃貸人だと、大家は賃貸人の費用で治させようとするのでご注意あれ。



所持品をチェックして、
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署まで連行される。
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